「万引き家族」は現代の蟹工船か

Posted by fukutyonzoku on 13.2018 映画 0 comments 0 trackback


今年のカンヌ国際映画祭でばパルムドール(最高賞)を受賞した「万引き家族」をようやくみた。

安藤さくらの存在感は見事としか言いようがない。冴えないおばさんにしか見えない時もあれば、少女のように可愛らし一応時も。かと思えば艶めかしい大人の女に豹変し、時に神々しくさえ見える。あの七変化はまさに「女優」。カンヌ国際映画祭審査委員長のケイト・ブランシェットは「安藤サクラの泣きの芝居は素晴らしかった。これから私たち俳優が泣くシーンがあったら彼女の真似をしたと思って」と絶賛している。

リリー・フランキーがダメ男を実にナチュラルに演じているのも見事。松岡茉優は持ち前の器用さを遺憾なく発揮している。そして、定評のある子役の演技の素晴らしさは今回も同様で、是枝作品の面目躍如といったところ。

この映画は、子供にも万引きを教えていた窃盗の常習犯や、亡くなった親を庭に埋めて死亡届けを出さずに年金を不正受給していた事件など、実際に日本で起こったいくつかの実話を基に是枝監督が脚本を書いている。映画製作にあたって是枝監督は養護施設などを実際に取材したそうだ。つまり、このストーリーは今の日本社会の実像を描いたドキュメンタリーに近い作品と言っていい。
映画に登場するのはダメな大人ばかりで、この「家族」の行いは犯罪のオンパレード。それでも「少し不器用で運が悪かっただけの愛情深い『普通』の人々」と共感できるよう、必ずしも血の繋がらない「家族」の絆やヒューマニティーを巧みに描いている。

是枝監督のメッセージをあえて言語化するとすれば、こんなふうではないか。

常識の世界や家族の方がむしろ嘘と虚飾に満ち、この「家族」こそが本当の家族の姿ではないのか……。
メディアや世間は犯罪者を表面的に叩き、排除するだけで、それ以上は見ようとしない。つまりはそこで「情報処理」が終わってしまい、人が犯罪に追い込まれる社会背景を考えようとはしない。でも、これは現実に私たちのすぐ身近で実際に起こっている現実なのだ。その最大の犠牲者は子供たちである。「自己責任」という一見尤もらしい呪文で心に蓋をし、見えないふりをするのはもうやめにしないか……。
置き去りにされている隣人や弱者への共感と互助を忘れ、静かに進む格差社会の実態を丁寧に描いた、洗練された現代の「蟹工船」だろう。
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ポーランド戦西野采配の得失

Posted by fukutyonzoku on 29.2018 スポーツ 0 comments 0 trackback


サッカーワールドカップは世界人口の半数に当たる36億人がテレビ観戦するという。オリンピックを遥かに凌ぐ世界最大のスポーツイベントだ。
今回のロシア大会で西野ジャパンはアジアのチームとして初めて南米チーム(コロンビア)を破り、セネガル戦でも2度リードされても追いついて引き分け、初戦の勝利が幸運の所産だけではなかったことを証明してみせた。大会前半戦で最も注目されたチームの一つになっていた。
その日本のベスト16入りが決まるかもしれない強豪ポーランドとのグループリーグ最終戦は当然、世界の期待と注目を集めていた。その世界的な注視の中、西野朗監督が指示した後半最後の10分にわたるボール回しは、世界中のサッカーファンの激しい失望と怒りをかった。前2戦で急増した日本代表ファンや親日家を落胆させ、日本人や日本文化全体のイメージにまで傷をつけた。
この試合で日本が得たものと失ったもの。関係者はそれらを天秤にかけ、冷静に考えるべきだろう。サッカー界だけの問題ではない。

【引用】
▽英公共放送BBC
・元アイルランド代表DFマーク・ローレンソン氏「茶番だ。紛うことなき茶番だ」「ワールドカップの順位を決めるもっとマシな方法を見出すべきだ」
・元エバートンMFレオン・オスマン氏「これは恥だ。最後の約10分間に2チームのやったことはワールドカップで誰もがみたくないものだ。茶番に変わってしまった」
・北アイルランド代表のマイケル・オニール監督「1982年や86年大会ならこんな試合はあった。他の試合結果に全ての運命を委ねるなんて自分にとっては信じられないことだ」「日本を好きになっていたけれど、次のラウンドでボロボロに負けてほしいね」
・「(日本は)セネガルが得点を入れれば敗退するかもしれず、自分たちで得点すれば16強入りが確実になるのに、西ドイツ対オーストリア戦(談合疑惑がもたれた1982年大会の試合)より奇妙だった」

▽ロシア国営テレビ
「こんな試合の最後は見たことがない」
「ここはワールドカップだよ」
「彼らは歩くこともせず、ただ立っていた」
「もうロシア人は日本を応援しない」
「観客のことを忘れてはいけない。イエローカードの差で決勝トーナメントには進んだが、試合は美しくなかった」

▽ロシア・スポルト・エクスプレス紙(電子版)
「スキャンダルだ。日本はボールを回して時間を稼ぎ、ポーランドは攻撃しなかった。両国はサッカーをばかにした」
「今やサムライと呼ぶのも気が引ける」
「フェアプレーポイントの差で日本が決勝トーナメントに進出したが、ボールを回して終了の笛を待つことが『フェアプレー』だろうか」

▽英インディペンデント紙
「日本がポーランドとの馬鹿げた茶番の一戦を握りつぶし裏口から16強へ」「日本が落ち着いて面白味もなく試合を抑え切ると、ボルゴグラードの周辺すべてにブーイングが鳴っていた。彼らは、日本の声援がそれを1000回以上掻き消してくれることを知っていた。日本は0-1での敗戦に乗っかるため自陣で目的のないパス回しというシュールなチーム判断を4万2000人以上の観衆と世界中の何百万というテレビ視聴者に見せて、なんとかセカンドラウンドへと駒を進めた」

▽英ガーディアン紙
「日本がポーランドに敗戦も、こっそりとワールドカップ16強へ」
「多くの敬意を集める中での奇妙な試合となった。サマラでの得点経過を知った日本は、自陣深くでボールをキープし、さらに失点することやイエローカードをもらうことを避けてプレーして試合を終えた。観客の多くが、嫌悪を込めた口笛で感情を表したが、日本は少しも気にすることはなかった」

▽英デイリーメール
「セネガルが、また得点を挙げれば大会から去ることになる日本にとってまったく賢明な作戦ではなかった」

▽フランススポーツ紙『L’Equipe』
「それほどフェアプレーじゃない日本」
「ワールドカップ史上初めて、カード数が少なかったという理由でグループリーグを突破した。それに値しないゲーム終盤の振る舞いだったにもかかわらずだ」
「10分間に渡って悲壮なスペクタクルを提供した」
「(西野朗監督の試合後の会見での)ひきつった顔つき、困惑気味の表情、無理に作った微笑、ギクシャクした悲しげな声のトーン……グループリーグを突破してもいないのに(スタメンを)6人も変えたチームを送り出す、凄まじいリスクを冒したのだ」
「(かろうじてベスト16に進出したが)もしそうなっていなかったら、この前技術委員長はメディアの大バッシングに晒されていただろう。4月8日にハリルホジッチを監督の座から追い落としたコウゾウ・タジマ(田嶋幸三)会長についても同様である」

▽アルゼンチン『TyC Sports』
「東洋のチームは嘆かわしいパフォーマンスで試合を締めた」

▽スペイン『マルカ』
「試合は日本人たちの赤面すべきイメージとともに終了した」

▽スペイン『アス』
「試合は死に絶え、ナンセンスなものへと変わってしまった」

▽チリ『プブリメトロ』
「日本は時間稼ぎを恥と感じず、“フェアプレー”が彼らを助けた。日本のベスト16入りは恥ずべきものと形容できる。日本人たちは臆面のない時間稼ぎで、0-1の敗戦を維持した」

▽海外ツイッター
「日本はフェアプレーに背きながら、フェアプレーでもってグループステージを突破した」
「日本はクリーンなプレーを見せなかったにもかかわらず、フェアプレーでベスト16だ」
「日本の恥ずべき行いであり、彼らの文化に反している」
「ポーランド対日本の最後の10分間を見て、FIFAからフェアプレーが悲しいものであることを説明されたようだ」
「日本とポーランドが最後の15分、スコアで合意に達したことはフェアプレーなのか?」
「日本のフェアプレーポイントはセネガルより上だった。しかし、今日の試合に関しては、セネガルがよりフェアに戦った」
「セネガルが進出すべきで、日本はふさわしくない」
「FIFAのフェアプレーは日本がボールを持って、最後の10分間立っているということなんですね」
「日本は終盤のアンフェアな振る舞いでフェアプレーで突破。それが全てなんて、恥だ」
「日本はフェアプレーを汚した」
「(日本の試合は)恥ずかしいサッカーだ。フェアなプレーができないなら別のシステムが必要だ」

(出典)
https://www.football-zone.net/archives/116890

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180629-00000002-wordleafs-socc

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180629-00000017-asahi-spo

https://www.football-zone.net/archives/116722?utm_source=yahoonews&utm_medium=rss&utm_campaign=116849_2

https://www.jiji.com/sp/worldcup2018?s=news&k=2018062900318

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180629-00043197-sdigestw-socc

野党もメディアも見落とした柳瀬参考人答弁の矛盾点

Posted by fukutyonzoku on 11.2018 政治・経済 0 comments 0 trackback
柳瀬唯夫元首相秘書官が10日、国会に参考人招致された。
午前の衆院予算委員会では、平成27(2015)年4月2日に加計学園関係者らと首相官邸で面会し、そこに愛媛県や今治市の関係者も同席していた可能性があると、ようやく認めた。
しかし、焦点となっていた愛媛県職員作成文書に記された「首相案件」という発言については、「私は『首相』という言葉は使わない」「私が伝えたかった趣旨と違う」などと否定した。

柳瀬氏は「当時、国家戦略特区制度が安倍政権の成長戦略の一丁目一番地というか、大きな目玉政策であることは申し上げた。前年9月の国家戦略特区諮問会議で民間議員から追加の規制改革提案があり、総理が獣医学部新設の解禁を早急に検討したいと述べている、そういう案件だという趣旨を申し上げた」と答弁した。

つまり柳瀬氏は、当時の状況を思い返せば、安倍首相は「獣医学部新設の早急な検討」を前年の諮問会議で表明していたので、「獣医学部新設」=安倍首相の意思(つまり首相案件)だという趣旨の説明をしたのであり、加計の計画が「首相案件」だと言ってはいない、と。もし愛媛県職員らがそう解釈したのなら、それは誤解だ、と説明したわけだ。

この釈明は一見理屈が通っており、この答弁について野党もそれ以上は追及しなかった。この原稿の執筆時点で、私の知る限りどのメディアも指摘していないが、柳瀬氏のこの答弁は「虚偽答弁」とは言わないまでも、事実をかなり歪曲しているので、指摘しておく。

柳瀬氏が言及した2014年9月9日の国家戦略特区諮問会議で取り上げられた有識者議員の追加提案は、実は20数項目に及んでいた。「獣医系大学・学部新設の解禁」はその“One of them”に過ぎないのだ。

しかも、諮問会議の議事要旨石破茂担当相(当時)の記者会見要旨によれば、安倍首相が「石破国家戦略特区担当大臣を中心に早急に検討し、早いものは臨時国会に提出していきたいと考えています」と述べたのは確かだが、獣医学部新設解禁について安倍首相が直接言及した形跡はない。つまり、この段階ではまだ、首相が「早急な検討」を指示した改革案20数項目の一つに過ぎず、安倍首相が全部やると言ったわけでもなければ、獣医学部の「じ」の字も言っていないのだ(少なくとも公表されている議事要旨を見る限り)。

それを、さも首相が「獣医学部新設の解禁」を表明し、既に「首相案件」化していたかのように語るのはかなり無理のある解釈であり、意図的なミスリードか勘違いのどちらかである。もし柳瀬氏が当時、本当にそう認識していたとすれば、それは「表の議論」とは別のところで「裏の議論」が進んでいて、柳瀬氏もそれに関与していたということにほかならない。