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「高橋洋一」さんへの回答

Posted by fukutyonzoku on 20.2015 経済分析 0 comments 0 trackback
3年前に当該ブログに書いた「『97年消費増税が原因で税収は減った』説は本当か?」に対し、「高橋洋一」さんから数回に亘って挑発的なご質問が届いています。(「コメント」欄参照)

このコメントは、他の学者・エコノミストへの誹謗中傷を含め、あまりに下劣な内容で、高橋洋一氏本人かどうかも不明なこともあり、しばらく無視していました。本人だとすれば「アベノミクスの失敗」に対する批判の高まりでよほど追い込まれているんだろうな、と。いずれにしても、とっくに結論が出ている議論を何度も蒸し返すのは気乗りしないのですが、「どうしたんでしょうか、返事がありません」としつこく返答を催促されたこともあり、回答しておくことにします。

家計調査で判断する愚かしさ

まず、「高橋洋一」さんがコメントに引用しているように、2014年の家計調査結果を基に「消費は回復してない」と論じることには、あまり意味はないと思います。消費税増税前の駆け込み需要が2013年から始まっているのに対し、増税後の反動減は丸々2014年にカウントされているからです。
さらに、家計調査はサンプル数の少なさや調査協力世帯の偏り(公務員世帯が多いとの説)など、調査自体の信頼性に対する疑問もあります。一例を挙げれば、2006年の総世帯支出は2014年より落ち込みが大きかったわけですが、この年は夏場の天候不順がありながらQEベースの個人消費の伸びもGDP成長率も堅調でした。
家計調査は消費動向の定点観測としては一定の意味がありますが、消費の全体像、つまりは消費需要総量を判断する指標ではそもそもない、ということです。

個人消費は2四半期連続プラス

「消費は回復したんですか?」とのご質問ですが、答えは簡単明瞭。着実に回復しています。
四半期別GDP速報をみれば、個人消費は消費税増税直後の反動減で大きく落ち込んだ4~6月期以降は、7~9月、10~12月期と2期連続で前期比プラスと回復が続いています。民間最終消費支出でみても家計最終消費支出でみても、実質でも名目でも、です。
これ以上、説明が必要とは思えませんが、「0.2~0.3%程度(注1)の微増で『回復』と言えるのか」「4~6月に落ち込んだ後、底ばっているだけで『回復』と言うにはほど遠い」との声が聞こえてきそうなので、先回りして回答しておきます。
この件について私は、私と同意見の常識的なエコノミストたちと同様、「消費税を増税すれば景気は力強く回復する」とは言っていません。ただ、一時的なマイナス影響はあるにしろ、高橋氏らが言うように「消費増税を機に、景気が個人消費を中心に腰折れし、税収はかえって減る」といったことは起こらない、と言ってきただけです。個人消費ほど安定した需要項目はなく、消費税収ほど安定的な税源はないからです。
実際、私の予想通り、消費が落ち込んだのは4~6月期だけでした。7~9月期は天候不順やイレギュラーな在庫の動きもあってGDPは2期連続のマイナス成長となり、すわ景気後退か、と囃したてられましたが、実は肝心の個人消費は早くもプラスに転じていました。民間設備投資と総需要(GDP)も10~12月期にはプラスに転じ、消費税増税の影響が大きい民間住宅投資も3四半期連続マイナスながらも10~12月期のマイナス幅はゼロ近傍まで縮小しています。
また、2015年に入ってからも景気の順調な回復を示す指標が相次いでいます。設備投資の先行指標である機械受注の民需(船舶・電力を除く)は、4~6月期に前期比10.4%減と落ち込んだ後、10月に一度腰折れしそうになりながらも持ち直し、12月は前月比8.3%増の高い伸び。設備投資の急回復を示唆しています。

国内景気全体を総合的に判断する指標である景気動向指数(CI一致指数)も、夏場を底に順調に回復している様子を示しています。高橋氏らが盛んに喧伝していた「消費増税で消費や景気が腰折れし、デフレ脱却が遠のく」という姿は、少なくとも消費や景気動向の上では、私が予言した通り一時的な落ち込みが見られただけで、その後は順調に回復してきているというのが、公平にみた姿でしょう。

「増税で税収は減る」説はやはり虚妄だった!

2014年度の総税収も当初見込みより上振れ、15年度税収見込みはさらに増える見通しとなっています。

(参考記事)
1)国の税収上振れ1兆円超か 14年度、所得税など増

2)増税でも税収増達成、ついに崩れた都市伝説

つまり、消費税増税による消費や景気への下押し効果は4~6月期、せいぜい7~9月期で終了しており、個人消費は一時的な落ち込みがあっただけで、高橋氏らが予想していたような景気の腰折れも税収の落ち込みもなかったことが、ここにきて統計上、証明されてしまったわけです。
尤も、高橋氏らが予想の根拠としていた97年の消費税増税の後でさえ、個人消費は7~9月期にはプラスに転じていました。10~12月期以降の景気の急激な悪化は別の要因(金融危機)であったことはそもそも明らかだったのです。

消費増税に責任転嫁したいリフレ派

消費や実体経済が力強さを欠いている原因をあえて挙げるとすれば、消費増税よりもむしろ、物価上昇に賃金上昇が追いつかず実質賃金が低下していること、つまりはアベノミクスの成果が実体経済に波及していないことにあるとみるべきではないか。アベノミクスが「失敗だった」と結論付けるのは時期尚早かもしれませんが。
いずれにしても、リフレ派は「アベノミクスの失敗」に対する責任追及を恐れ、消費税増税に無理失理責任転嫁しようとしているようにしか、私には見えません。

(注1)その後、3月9日発表の2次速報値では、民間最終消費(個人消費)支出の実質値は、1次速報の前期比0.3%増から0.5%増に上方修正された。年率換算で約2.0%の伸びで、消費税増税直後の反動減を乗り越え、2期連続での消費回復の足取りはより鮮明になっている。


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「97年消費税増税で税収は減った」は本当か?(その3)

Posted by fukutyonzoku on 07.2013 経済分析 0 comments 0 trackback
増税後、消費はいったん回復した

今一度、前記(その2)の直近の確報ベース(名目値→http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h23/tables/23qom1n_jp.xls、実質値→http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h23/tables/23qom1rn_jp.xls)で、97年消費税増税後のGDPと個人消費の推移を四半期データで確認しておこう。

直近の確報データでは、個人消費については増税直後の平成9(1997)年4~6月期でさえ名目、実質とも前年同期比プラスを維持している。7~9月期には名目で同2.0%増、実質でも同0.4%増と回復。北拓銀や山一証券が相次いで破綻し、金融恐慌の様相を呈した10~12月期には名目で0.5%増と伸び率が鈍化し、実質で同0.8%減とマイナスに転落。翌年1~3月期には名目で同マイナス2.6%、実質同マイナス3.6%と大きく減退した。GDPも以来1年以上にわたり、名目、実質ともにマイナス成長が続くことになる。
つまり、GDP全体も個人消費も、実質でも名目でも、増税直後でさえ前年比マイナスにさえなっておらず、3~5カ後の夏(7~9月期)には早くも巡航速度の成長を回復していたことがわかる。

ところが、秋以降になって突然伸び率が鈍化、さらに翌年1~3月期以降にガクンとマイナスに沈んだ--これが、統計から確認できる事実である。
このタイミングからみて、少なくとも97年から99年に至る経済の大きな落ち込みは、アジア通貨危機に端を発する金融恐慌の影響としか判断のしようがない、ということだ。
前記の昨年の私の記事でも引用しているが、家計調査を使った内閣府によるミクロ分析では、97年の消費税増税によるマイナスの所得効果は0.3兆円(GDP比0.06%)に過ぎないとの試算を明らかにした上で、「消費税増税が97~98年の景気後退の主因であったとは考えられない」と結論付けている。
http://www5.cao.go.jp/keizai2/keizai-syakai/k-s-kouzou/shiryou/wg1-1kai/pdf/5-1.pdf
→7ページ

■なぜ消費税だけ増えている?

税収について言えば、98年以降、法人税や所得税が、①不況による税収の自然減、②景気対策としての減税--のダブルパンチで落ち込んでいる中で、唯一、横ばい~微増傾向を続けているのが消費税だ。



仮に「97年の消費税増税が原因で総税収が減った」のであれば、主要なパスは以下のようになるはずだ。
①消費税増税→消費低迷→消費税収減
②消費税増税→消費低迷→企業売上減→業績悪化→法人税収減
③消費税増税→消費低迷→企業売上減→業績悪化→賃金等の所得減→所得税収減

細かく言えば、国税には揮発油税、相続税、酒税など他にも税目はたくさんあるが、「基幹税」と言われる所得税、法人税、消費税の三つで税収全体の9割近くを占めているため、この際他の税目は無視しても差し支えない。この三つのパスの全部、あるいはいずれかが起こり、トータルとして総税収が減少した、という論理になるはずだ。

しかし、まず①は、前述したように、消費税増税による消費減退の影響が最も顕著に顕在化するはずの増税直後でさえ、消費は減ってさえいない。つまり、明らかな間違い。②、③についても、いずれのパスもまず先に消費が減り始めないと、その後のパスにはつながらないため、これも誤り。
つまり、彼らの主張は「消費税増税後も消費は減っていない」という事実のみをもってしても説明がつかなくなる。
統計をきちんと確認しようとさえしない一部の(自称)経済評論家たちが主張するように、もし消費税増税の影響で税収が減ったというなら、なぜ肝心の個人消費や消費税が増税後も安定的に増えているのか、是非説明してほしいものだ。

総税収が伸びない最大の原因は所得税・法人税減税と地方への税源移譲

結論を繰り返せば、97年の消費税増税にもかかわらず、トータルで税収が減っているのは、全体としての経済の不調もあるが、端的に言えば、基幹税である所得税と法人税の減税の影響が大きい。

所得税については、過去にこれだけの税率引き下げや地方への財源移譲を行っている。


法人税については、このグラフを見てほしい。

法人税収は、企業が過去最高益を更新した06年でさえ、税引き前利益が半分程度だった96年頃とほぼ同水準しかない。つまり、法人税収が上がらないのは、経済(企業)の不振というより、減税の影響が大きいのだ。
また、特に地方の中小・零細企業で、法人税を払わない赤字企業が増えていることも影響している。

つまりは、一部の論者が主張しているように、景気が回復しても、税収の大宗を占めている法人税や所得税は税率を97年以前の水準に戻すか、マイナンバー(国民背番号)制度とセットとなるインボイス制度などの導入等によって補足率を抜本的に上げない限り、97年以前のようには増えない構造に変わってしまっているのだ。

消費は景気変動に左右されない

マクロでみた個人消費や消費税いうものは、一般に思われているほど景気変動に左右されるものではない。なぜなら、日本の個人消費の大宗は生活必需品だからだ。バブル的な経済環境の場合は贅沢品が売れるといったことはもちろんあるが、景気が悪い時でも、殆どの家計にとって支出を大きく抑えることには限界があるのだ。生活スタイルを大きく変えることは、評論家が言うほど簡単ではない。
大半の家計は結局、収入が減れば貯金が減る、あるいは借金が増えるという結果になる。日本ではそもそも普段から贅沢品をたくさんに買っている家庭はそんなに多くないということもある。経済学的に言えば、総所得が上がれば消費性向が下がり、総所得が下がれば消費性向が上がる。つまり、所得が増えても減っても、景気がよくても悪くても、今の日本のトータルでみた家計消費はさほどぶれないということだ。その原因を一言で言うなら「経済の成熟化」ということだろう。
消費税増税時の影響を考える際にも、同じことが言える。増税されるからといって、その分節約する(できる)家庭はあまり多くはないし、節約できても高はしれている。このことは、97年の増税後も消費税収が時々の景気変動に左右されず安定的に増えている事実からも裏付けられる。

税率が高い欧米の方が日本より景気がいいのはなぜ?

そもそも消費税増税が消費や景気を一時的ではなく長期的に冷やすのであれば、(付加価値税の)税率が(標準税率も実効税率も)日本より遥かに高い欧米の方が、97年以降最近まで消費も景気も全体として日本より好調に推移した事実をどう説明するのだろうか。消費税増税で本当に消費や景気が長期的な打撃を受け、その結果総税収も減ったというストーリーが本当なら、欧米諸国の消費や景気や税収はもっと酷いことになっていないと辻褄が合わないはずだ。しかし事実は、最も税率も税収(対GDP比)も低い日本が最も酷いことになっているのである。

「97年消費税増税で税収は減った」説は本当か?(その2)

Posted by fukutyonzoku on 07.2013 経済分析 0 comments 0 trackback
私が以前、このブログで書いた記事「『97年消費増税が原因で税収は減った』説は本当か?」(2012年02月16日)について、SynergyCatさんから1カ月余り前にご質問を頂きました。
質問は--
増税は税収減の主役ではないという理由で、 実質GDPへの影響の無さを絶対の根拠にされていますが、それはなぜですか? 1997年を境に名目GDPとデフレータは下がり続けています。ここを完全に無視している理由についても詳しく教えてください
」(http://fukutyonzoku.blog.fc2.com/?no=11&m2=res)
との内容です。
数日前までこの質問コメントに全く気付かず、返答が1カ月以上遅れになってしまいましたことをまずはお詫び申し上げます。丁寧なご質問ですし、同様の誤解が多くの方に広がっているようにも思えますので、返答したいと思います。SynergyCatさんにとっては今更 かもしれませんが、ご容赦ください。

GDPは実質値でみるのが「普通」

GDP成長率を実質値で論じていることにSynergyCatさんは違和感を持たれているようです。確かに、デフレ脱却が最大の政策課題となっている今では、名目値やデフレーター等の物価指標は注目される重要な指標になっており、政策目標自体が物価上昇率や名目GDP伸び率となっているので、その疑問は理解できます。
ただ、従来は名目成長率が注目されることは殆どありませんでした。経済成長率と言えば、実質GDP伸び率のことを指していたのです。ご指摘のように実質GDPを「絶対視」しているわけではありませんが、特段の事情がない限り、実質値を使うのが「普通」です。デフレが最大の経済問題になっている最近の日本を除けば、世界の常識と言っても差し支えないでしょう。
今回の議論の焦点は、97年4月の消費税増税前後の消費を中心とする経済状況や税収の点検です。当時はまだデフレが定着した状況ではなく、確認しましたが、実際に97年度のGDPデフレーターも微かながらプラス(前年比0.9%上昇)でした。僅かなプラスということは、実質値で論じても名目値で論じても殆ど変わらないということです。であれば、あえて名目値で論じるのは、少なくとも専門家の世界では逆に不自然と感じる人が多いと思います。

念のために、内閣府の四半期別GDPの推移について、直近の確報データで1997年(平成9年)前後の名目、実質両方のデータを再確認してみました。

◆名目値→
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h23/tables/23qom1n_jp.xls
◆実質値→
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h23/tables/23qom1rn_jp.xls

やはり、個人消費(家計最終消費支出)、GDP(国内総生産)の増減率ともに、名目値と実質値の推移に大きな違いはありません。

付言すれば、私の元記事では、実質GDPだけを論じているわけでもありません。個人消費にも言及していますし、財務省のサイトにもリンクを張りながら、費目別の税収推移にも触れています。税収はもちろん名目値です。特に消費税については、名目の個人消費と連動しているので、この推移を見れば、名目GDPの6割を占める家計最終消費支出(個人消費)の名目値の推移を見るのとほぼ同じことになります。

97年を境に名目GDPとデフレーターは下がり続けている?

次に、ご質問の後段で「1997年を境に名目GDPとデフレータは下がり続けています」とあります。確かにそういう大雑把な言い方をよく目や耳にしますが、この言い方は不正確です。
GDPデフレーターが98年以降下がり続けているのは事実ですが、実はピークは94年で、翌年からは既にマイナスに転じていました(前記の内閣府確報データで確認できます)。たまたま97年のみ例外的に微増となっているだけです。これは、消費税増税による一過性の物価上昇の影響でしょう。この増税の一時的な影響を除けば、「94年を境に下がり続けている」とみるべきでしょう。
ちなみに、94年は円が初めて1㌦=100円を割り込み、翌年4月には当時の最高値である同79円台まで円高が進んでいます。


また、名目GDPは97年を境に「下がり続けている」わけではありません。
世界的に「ITバブル」と言われた00年度や、03年度からリーマンショック前年の07年度までの5年間にわたって緩やかながら拡大を続けています。

こうして統計を仔細に点検すれば、「97年の消費税増税からデフレが始まった」という解釈は、こじつけもいいところだということが容易に理解できるはずです。

見過ごされがちな円高の影響

とはいえ、名目GDPが回復期もありながら15年前のピークをいまだに回復できていないのは事実です。そのことを理解するには、様々な要因を考慮する必要がありそうですが、見過ごされがちな視点の一つが、先程も少し触れた円高です。
1998年央の1㌦=146円をピークに2011年10月の同75円まで、13年間で円はほぼ2倍に増価しています。


円高の影響は、輸出が減少するだけでなく、輸入物価の値下がりでデフレ圧力を高めます。さらには、2000年代に入ってからの「中国ブーム」も相まって、製造業の空洞化が加速し、生産や設備投資、雇用の海外漏出も加速しました。中国からの安い製品輸入の増加や半導体製品の物価統計問題(同じ品質・性能の製品の価格変化を追うため、店頭の売れ筋相場よりも値下がりが強く反映されてしまう統計手法の問題)もあります。名目GDPが00年代央の緩やかな経済拡張期にも伸び悩んだ原因は、これらの要因が複合的に絡んでいるとみるべきでしょう。
ちなみに、名目GDPをドルベースでみると、95年のピークを2010年には超えています。
http://ecodb.net/country/JP/imf_gdp.html

10年ごとの金融危機の影響

アジア通貨危機を機に、97年秋に三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券が相次いで経営破綻し、1年後には日本長期信用銀行、日本債券信用銀行まで破綻に至った金融システム危機(言うまでもなく消費税増税とは全く関係がなく、バブル崩壊後の不良債権膨張が本質的原因)の影響による98~99年の落ち込みがいかに大きく、さらにはリーマンショック(サブプライム危機)による、主として円高と海外経済不振の影響が、当初の予想を超えて最近まで続いた影響がいかに大きかったかということでしょう。リーマンショックの原因となったサブプライム問題は、米国の金融機関やGMの国有化や超金融緩和(QE)で取り敢えず抑え込んでいますが、日本のバブル崩壊同様、不良債権処理には10年かかるとも言われ、今後FRBがQEの出口を探る中で、いつそれらが表面化して世界的な金融恐慌が再来してもおかしくありません。89年末のバブル経済崩壊と合わせ、日本はほぼ10年ごとに大きな金融危機を迎えているのです。
(その3に続く)

高橋洋一氏の我田引水的為替論

Posted by fukutyonzoku on 10.2013 経済分析 0 comments 0 trackback
再び、ダイヤモンド・オンラインの高橋洋一氏「俗論を打つ!」。「為替再考!なぜ小泉・安倍政権時代には円安誘導に成功したか」(2012年1月12日)

1年前の記事ですが、たまたま読んでしまったので、コメントしておきます。

為替市場は需給関係で決まるのというのは一般論として正しい。しかし、後付けで、こうした需給を決める一つの要因だけで説明するのはどうかな、と思う。その場限りの説明でしかない。もっとも、マスコミで出てくるコメントはこの類の『滑った、転んだ』という話ばかりなので、辟易している
→ご指摘通り、現実の為替相場は様々な要因と思惑の集積で動く。ただ、短期的には一つの要因や思惑で大きく動くことがあることも事実。だからこそ大きく相場が動いた時には、その原因を探ろうとするのは、市場関係者にとっては当たり前。それが大きなトレンド変化のサインかもしれないのだから。相場変動で勝負をしているのはプロの為替ディーラーだけでなく、FX取引をやっている一般の人々も少なくない。そうした相場の関心事を小バカにするような言いぶりは、市場の機能や市場関係者の役割を本当には理解していない、元大蔵官僚の傲慢さの表れではないだろうか。

…これは、昨年11月4日付『為替介入効果が長続きしない理由 日米マネー量の相対比が円ドルレートを左右する』に書いたことでもある。十数年前にその考え方に行き着き、その後、知り合いの金融関係者に話したところ、ジョージ・ソロスという有名な投資家が使っているソロス・チャートと同じであるといわれた。そのような高名な人がいうのだから、だいたい正しいのだろうと思っていた。たしかに、同コラムに書いたように、プラザ合意以降の円ドルレートをかなりよく説明している
→昨年7月4日の当ブログ(やはり崩れたソロスチャート)でも紹介したように、日米のマネタリーベース伸び率の相対比較が為替相場の動きとほぼ一致するというソロスチャートは、高橋氏が「円安誘導に成功した」とうそぶく小泉・安倍政権時代(02~07年頃)には大きく乖離し、連動性を失っていた。リーマン・ショック後は逆方向に乖離している。ところが、日銀当座預金の超過準備を除いたマネタリーベースで比較した「修正ソロス・チャート」では、かなり連動性が高い。これは何を意味しているのだろうか。

「修正ソロス・チャート」が意味するもの

ドイツ証券の安達誠司氏が考案した「修正ソロス・チャート」が表しているのは、日銀当座預金の法定準備額+現金である。法定準備額は預金量に比例して決まるので、つまりは預金量+現金量を表していることになる。要するに、マネーストック(マネーサプライ=通貨供給量)とほぼ同じ概念である。超過準備、つまりはブタ積み分を差し引いているということは、量的緩和の影響を除外していると言い換えることもできる。
これらから導き出される論理的帰結は、為替相場、少なくとも過去10年以上にわたるドル円相場は、高橋氏らが指摘するようなマネタリーベースの伸び率に相関しているのではなく、実際に市中に流通しているマネー量(マネーストック)との相関が強いということだ。量的緩和の影響についても、マネーストックとの相関が切れている場合は為替相場にも影響を与えない--ということではなかろうか。

…竹中平蔵経済財政担当相や中川秀直自民党幹事長らの様々な努力の末に、日銀はマネーを増やすことになって、筆者が政権内で経済政策を担当していた小泉・安倍政権では、為替はその後の政権に比べて円安だった。これは意図した結果だった
→自分が内部で支えた小泉・安倍政権時代の好況期を「巧みな経済政策の成果」としてアピールしたいのだろうが、簡単に言ってしまえば、この時期はBRICSを中心に海外景気が絶好調で、日本もその恩恵に預かっただけのことだ。橋本龍太郎政権以来の「構造改革」の延長線上にある「小泉・竹中」路線の基本線は間違っているとは思わないが、構造改革の多くは成果が出るまでに時間がかかる。両政権下で経済が比較的好調だったのは、たまたま海外経済が活況を呈したこと、さらには、海外メディアからは(日本人主婦の総称としての)「ミセス・ワタナベ」が世界の為替相場をリードしているとまで言われたFXブームや円キャリー取引ブームも手伝って円安となった影響も大きかった。金融理論的に言い直せば、欧米の好況による金利上昇でゼロ金利に張り付いている日本との実質金利差が拡大し、他力本願的に円安となっただけのことだ。
むしろ小泉政権末期の06年3月に日銀は量的緩和を、同7月にはゼロ金利を相次いで解除し、安部政権下の07年1月には利上げまで行っている。「円安誘導」どころか、デフレから脱却したと見誤り、平時の金融政策に戻そうと利上げに舵を切っているのだ。両政権内にいた高橋氏はこの時期、なぜ日銀に強行に翻意を迫らなかったのだろうか?

なお、高橋氏らの単純な貨幣数量説に基づく錯誤については、以下のブログが明解に言い当てています。アゴラ:貨幣数量説と高橋洋一氏

高橋洋一氏の不思議なインフレ目標政策擁護論

Posted by fukutyonzoku on 07.2013 経済分析 6 comments 0 trackback
ダイヤモンドオンラインで連載されている「俗論を撃つ!」で、筆者である高橋洋一・嘉悦大学教授が書いていた「インフレ目標『弊害論』を検証する」への疑問点を指摘しておきたい。彼の主張は常に突っ込みどころが満載なのだが、彼がブレーンを務める安倍晋三政権が誕生し、影響力を高めている。これまでは時々間違いを正し、後は笑っていれば済んだが、そういうわけにもいかなくなりつつあるので、時間が許す限り、きちんと疑問点や間違いを指摘しておこうと思う。

この10年ほどの間にインフレ目標を採用している国でハイパーインフレになった国はひとつも存在しない

→そもそも立論の前提がおかしい。インフレ目標を採用するだけでハイパーインフレを招くとの意見に対し反証する形をとっているが、そんな極論を主張している専門家が本当にいるのだろうか。少なくとも私は知らない。
インフレ目標政策自体というより、非現実的な目標数値設定や、それを達成するために日銀の独立性を奪い無制限の量的緩和や国債の直接引き受けといった政策手段までを政府が強制し、要は財政ファイナンス(国の財政政策や借金の肩代わり)をやらせることに対して多くの専門家が反対しているのだ。財政ファイナンスの結果として、通貨の信認も財政規律も失われ、国民生活が破壊されるリスクが高まる、という真っ当な主張である。
また、そもそもインフレ目標採用国の中で日本より財政状況(対GDP比の公的累積債務残高)が悪い国はないので、過去10年にインフレ目標採用国の中でハイパーインフレになった国がなかったという事実は、日本が今後インフレ目標を採用してもそうならないという根拠にはならない。論理がおかしい。

現金需要がきわめて旺盛な流動性の罠の状態であれば、現金がじゃぶじゃぶ状態であり、インフレ期待が生じてもそれらの一部が債券購入資金に回り、債券価格の下支えになって金利はなかなか上昇しないのだ
→「現金需要が極めて旺盛」な「流動性の罠の状態」って何? 仮に企業の資金需要やインフレ期待が出てきてマネーが企業設備投資やリスク資産に向かえば「現金がじゃぶじゃぶ」の状態は自然に解消していく(金融緩和の継続で無理にじゃぶじゃぶの状態を続けようとすれば別だが…)。そうなれば、当然のことながら債券価格は下落し、長期金利は上昇する。現に、リーマン・ショック前の好況期だった2006年には長期金利は2%まで上昇していた。


最近も安倍晋三・自民党総裁の衆院選時以来の発言や円安・株高を受けて、長期金利は依然として低水準ながらも実際に急騰した。


1930年代の大恐慌において、米国や日本の歴史事実を見ても、名目金利の上昇は見られなかった
→なぜ、ハイパーインフレが起こった第二次世界戦後の日本やドイツの例をスキップし、1930年代大恐慌まで遡るのだろうか。昭和金融恐慌や大恐慌はバブル崩壊による金融危機であり、現在のデフレ慢性化やソブリン危機との複合危機とは危機の中身が違う。現在の危機はむしろ戦中の国家破綻前夜の状況に近いのではなかろうか。

金利が上昇すると債券の価格が下がるので、資産側の国債などに評価損がでるが、別の資産である株式などで逆に含み益がでる
→金融機関が保有する国債などの債券と株式などのリスク資産のボリュームは桁が違う。銀行保有資産のうち、国債・国庫短期証券や社債等の債券は2割近くを占めているのに対し、株式は2%に過ぎない。
http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je11/pdf/p01023_2.pdf

…この論者は、名目金利が1%上昇すると債務残高1000兆円なので、利払い費が10兆円増加するという。しかし、政府部門の資産600兆円の大半は金融資産で、その利回りアップによる収入増加のことは言わない
→その資産を差し引いた純債務残高の対GDP比でも主要国中最悪であることに変わりはない。
http://www.mof.go.jp/faq/seimu/03.htm

(1)金融緩和でデフレは直らないといいつつ、ハイパーインフレになるという。これをインフレ率の数字で言えば、▲1%のインフレ率を引き上げようとすると、2%や3%ではとどまらず、すぐに30%以上になると主張するわけだ…
→何も矛盾していない。現在の日本のようにゼロ金利が効かず、流動性の罠が慢性化してしまった経済においては、量的緩和をいくらやっても効果がなく、インフレ期待は出てこないと言っているのだ。ただし、極端なリフレ論者が主張するような国債の直接引き受けや無制限のリスク資産購入などを始めれば、それはもはや「金融政策」の則を超えた財政ファイナンス(財政政策や政府債務の肩代わり)であり、その「禁じ手」に手を染めてしまえば、日銀や国家の信認は一気に崩壊し、制御不能のインフレ亢進に突き進む可能性があるということ。それは「量的緩和の効果」というより「国家信認崩壊の結果」である。市場の大勢がそう判断すれば、国債や通貨の暴落にはそう時間はかからない。実際、ギリシャのCDSは数年前まで日本とほぼ同水準だったが、市場が財政破綻リスクが意識され始めてから、あっという間に跳ね上がった。

(2)金融緩和しても貸出にすぐまわらないといいつつ、金利はすぐ上昇するという。f.【金利上昇論】(前回参照)で書いたように、すぐに貸出はでてこない。だから、貸出市場が逼迫せずに金利も上昇しないのだが、金利上昇で国債暴落と話が飛躍する
→債券価格(金利)は資金需給だけで決まるわけではない。「発行体(国債なら国)がデフォルト(債務不履行)し、債券が紙くずになる」と市場の大勢が判断すれば、短期間に価格は暴落(金利は急騰)し、ジャンク債になるのです。

各国ともにインフレ目標があるので、金融緩和にも自ずと限界がある。だから、通貨安戦争になっていない。インフレ目標の範囲で各国ともに金融政策を行うことは、世界経済にとって好ましいことだ
→そもそも日銀は既に事実上の「インフレ目標」を採用している。 「ターゲット(目標)」と「ゴール(めど)」という言葉の違い、目標数値の明瞭度に多少の違いがある程度であり、実態的な差はほとんどない。インフレ目標採用国が目標期限を明示しているわけでもないし、政策手段を政府に約束しているわけでもない。
実は、インタゲ採用国でもそれほど厳格に結果が求められているわけでもないのだ。英国では頻繁にターゲットをオーバーしており、イングランド銀行(BOE)のキング総裁はこれまでに10回以上もその釈明の書簡を政府に提出している。つまり、インフレ目標は英国においては既に形骸化し、少なくとも高橋氏が言うようなインフレの歯止めにはあまり役立っていない。各国は米国のような「雇用」(失業率)や名目GDP成長率を新たなターゲットとする流れにあり、その意味では金融緩和競争、通貨安競争は既に始まっていると言える。次の金融バブルを膨らます危険があるのは百も承知で「日本化」、つまりはデフレの慢性化(流動性の罠)を避けることを最優先したリフレ政策をとっている。
それは欧米にとっては正しい処方箋かもしれないが、日本はとっくにそのタイミングを逸してしまった。デフレが染み付いてしまっている上に人口減少が始まっている日本で、期待インフレ率≒予想名目GDP成長率を高めることは容易ではない。2%程度のインフレ目標の実現でさえ簡単ではないと思うが、日銀がそれを掲げてアナウンスメント効果を狙うだけなら当面の実害は少ないだろう。ただし、後に実現しないことが明らかになった場合、期待を裏切られた市場の反動が起こり得るリスクがあることには注意が必要だ。
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