今朝のテレ朝「羽鳥慎一モーニングショー」から。今月2日の新型コロナ全国死者数は82人と、第5波のピーク(89人、昨年9月8日)を超えそうな勢いで増えている(過去最多は昨年5月18日の216人)。
不思議なことに、重症者数は886人と第5波のピーク(昨年の9月4日の2223人)の約4割水準にとどまっているのもかかわらずである。高齢者や基礎疾患保有者が感染に伴って持病が悪化し、軽症や中等症から持病が悪化し、亡くなるケースが増えているのだという。




番組にゲスト出演した二木芳人・昭和大医学部客員教授によると、昨年のワクチン接種や重症化抑制薬、治療法の進歩に加えて、そもそもオミクロン株は肺では増殖しにくく、肺炎が悪化するケースが少ないという。このため、肺炎やサイトカインストームといった従来の新型コロナ特有の症状で亡くなるケースは激減しており、新型コロナ感染が引き金となって元々持っていた持病が悪化して亡くなるケースが増えているという。典型的なのが北海道で、第6波では重症者はいまだゼロなのに既に30人近くが亡くなっている(うち50代の1人以外は全て60代以上)。ただ、これはインフルエンザや風邪でも起こる現象だという。
日本ではインフルの流行年には1000万人以上が罹患し、推計(超過死亡概念)で1.5万人が死亡したとされている年(2005年)もある。恐らくその殆どが高齢者だろう。

季節性インフルエンザの場合、罹患は冬の3~4カ月に集中しているので、仮に亡くなる人が冬だけと仮定すれば、05年の冬季の死者数は月に3750~5000人。約4000人としても、1日平均約130人が亡くなった計算だ。日別のピーク時には少なくとも数百人に達するはずだ。それを考えると、後遺症などコロナ特有の問題は残るとしても、感染者数や死者数だけをみて大騒ぎするのはどうなのか、という気もする。
ただし日本の場合、この程度の感染者数、死者数に抑えられているのは、ワクチン効果に加えてマスク着用や三密回避、会食自粛といった行動規制や自粛の結果という側面もあろう。ウイルス自体がインフル並みに弱毒化したとはまだ言えない。ここは忘れてはいけないのだと思う。
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英、米、カナダ、豪州は既にピークアウト 主要国の新型コロナ感染者数の直近の状況を点検すると、英、米、カナダ、豪州などは既にピークを越え、減少し始めている。これらの国々はオミクロン株感染が急増してから1カ月経つか経たないかでピークアウトしている。




一方、独、仏、韓国などはまだ増えているが、イタリアはピークアウトした感がある。独仏もまだ増え始めて1カ月前後しか経っていない。今がピークである可能性もある。




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ワクチン追加接種の効果? もし、独仏や日本などでも間もなくピークアウトするとすれば、オミクロン株は感染スピードは速いが、ピークアウトするのも早い可能性があるのではないかと思う。「減り始めた国はワクチンのブースター(追加)接種の効果」との見方もあろうが、独、韓国の追加接種率は50%を超えており、フランスも46.2%と米国の25.5%より相当進んでいるが、まだピークアウトしていないし、追加接種率が世界最速のイスラエルもまだピークアウトしていない。従ってあまり説得力はないと思う。2回接種率も英米は日本より低い。
https://www.asahi.com/amp/articles/ASQ1V5TN0Q1VUHBI015.html◾️
行動変容の影響? またピークアウトした英米などは今回は社会的規制を殆ど実施せず、国民はマスクさえろくにしていないので、行動変容とも無関係だろう。
とするなら、感染力の強いオミクロン株は自壊するスピードも速いという仮説が成立しないか。デルタ株感染拡大時に話題になった「エラーカタストロフ」仮説だ。私はウイルス学の専門家ではないので断定的なことは言えないが、オミクロン株はスパイクたんぱく質の変異が約30と多く、そもそも不安定なウイルスである。デルタ株以上に自滅速度が速くても何ら不思議はないと思う。
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第5波の感染者急減も謎のまま 日本ではデルタ株による昨年の第5波でも8月下旬から急に感染者数が減り始めた。当時のワクチン接種率は1回目が50%を超えた程度で、2回完了はまだ40%程度だった。感染者の割合が高い若い人たちはまだ殆どワクチンを打っていない状態だった。東京都では7月12日から緊急事態宣言が発令されたが、東京五輪を挟んで繁華街の人流は十分には下がらず、8月中旬のお盆明けからはむしろ人流は増加傾向に転じていた。それなのに8月下旬から感染者数が減り始めたのは今でも謎のままだ。
NHKスペシャル「病の起源」第4集 心臓病 ~高性能ポンプの落とし穴~をみた。
http://www.nhk.or.jp/special/sp/detail/2013/1027/世界保健機関(WHO)によれば、世界の死因トップが心臓病。日本でも過去30年間に発症率が約3.5倍に増えている。私たちは、なぜ心臓病になるのか。その答えは、進化に隠されている、という。
約2億2千万年前に誕生した哺乳類は、心臓の筋肉を強力にし、その筋肉に血管を張り巡らせたことで、高い運動能力を手に入れ、繁栄を勝ち取った。しかし人類は、700万年前に独自の進化の道を歩み始めたことで、自らの心臓を翻弄させる事態を生み出したという。
まず直面したのは、直立二足歩行による重力との闘い。足に血液がたまりやすくなり、脳が血液不足になるのを防ぐために、心臓は負担を強いられるようになった。
人間は直立するとヘソから下に血液の3分の2がたまるが、足の筋肉を動かことで足の血管が自然に伸縮し、血液の流れを助けてくれるようにできている。つまり、心臓の補助ポンプの役割を果たし、心臓の負担を軽減させてくれるのだ。心臓病などのリハビリで歩行訓練が重視されるも、このためである。原始時代より運動量が激減したうえに、栄養状態の向上で身体も大きくなり、あるいは太ってしまった現代人の心臓の負担は増しており、心臓病になるのは自然の成り行きだというのだ。
また、250万年前頃から始まる脳の巨大化は、人類に高度な知性と文明化をもたらしたが、一方で心臓の血管が詰まる心筋梗塞のタネを生み出してしまった。
血管にコレステロールが溜まる原因物質としてGcという物質が発見されている。実は人間以外の哺乳類は体内にもともとGcがある。このため、人間が哺乳類の肉を食べることでGcを体内に取り込むことになる。このGcが人間の身体内に入ると免疫機能が異物として反応し、血管の内側を傷付け、炎症を起こす。炎症が起きるとコレステロールが溜まりやすくなり、動脈硬化を進め、心筋梗塞や脳卒中が起こりやすくなるのだという。
なお、人間以外の哺乳類には心臓病は見られない。肉食動物がいくら他の哺乳類の肉を食べても心臓病にならないのは、もともと体内にGcを持っているので免疫反応が起こらないからだという。
Gcは脳内神経の発達を抑制する作用があることがわかっており、哺乳類の中で人間だけがGcを失ってしまったのは、脳の進化と関係があるのではないかという。いわば、人類は進化の代償として心臓病の宿命を抱え込んでしまったとも言えるという。
また、胎児期に栄養不足になると、脳の発達が優先されて心臓の発達が犠牲となり、本来より細胞が少ない心臓になってしまうという。生まれてから栄養状態がよくなっても、心臓の細胞はもはや増えず、大人になってからの心臓への負担が大きく、心臓病になるリスクが高くなることが知られている。
第二次世界大戦後の食料不足時代に生まれた世代は現在60代後半になっているが、欧州(おそらく日本も)のこの世代の心臓病の罹患率は高いのだという。
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Gcとは?番組の概要は以上だが、Gcというのは初耳で、番組ではGcやこの学説については説明不足の感が否めなかった。少し調べてみると、どうやらN-glycolylneuraminic acid(N-グリコリルノイラミン酸:Neu5Gc)のことのようだ。
http://blog.goo.ne.jp/dbqmw440/e/6820ce33fabc53109ead199af5df85efNスペがいうほどの有力な学説なのかどうかは知らないが、専門家からは番組に対して批判の声も上がっている。
https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=529326343818147&id=396644500419666&__user=100003363966465確かに、この崎谷医師が批判するように、食肉が心臓病の原因だとすれば、エスキモーなどの生肉だけを食べている民族になぜ心臓病が少ないのか、との疑問が起こる。しかし、イヌイット等のエスキモーについては、同じ哺乳類でもアザラシを多く食べる。アザラシの肉には青魚同様EPA、DHPが豊富に含まれており、これが血液をサラサラに保ち、動脈硬化を防いでいるとの疫学調査がある。
また、前記ブログ記事では、Neu5Gcは「子羊、牛、豚」肉に多く含まれる、とある。哺乳類の種類によってもGcの量には差があり、アザラシや白熊のような海洋生物を食べている哺乳類の体内Gcの量は極めて少ないという可能性もある。
いずれにしても、番組が原因物質としてGcにのみスポットを当ててしまったのは、ややバランスを欠いた取り上げ方だったのではないかと感じる。Gc説はデタラメとは言い切れないまでも、それが心臓病の最大の原因だと紹介できるほどの有力な学説なのかどうか。運動不足と糖質の過剰摂取による太り過ぎ、医療の進歩による長寿、あるいは様々な化学物質の摂取等による複合的な影響、とみるのが現実的なのではないかと感じる。
10月20日夜9時から放送されたNHKスペシャル「病の起源 第3集 うつ病~防衛本能がもたらす宿命~」をみた。
http://www.nhk.or.jp/special/sp/detail/2013/1020/
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日本の患者数は10年余りで倍増人類が苦しむ病気を、進化の観点から追求する「病の起源」。シリーズ第3集は、働き盛りを襲い自殺に追い込むなど深刻な社会問題になっている「うつ病」。世界の患者数は3億5千万人に達し、日本でもこの10年あまりで2倍に急増している。なぜ、私たちはうつ病になるのか?
その秘密は、意外にも5億2千万年前に誕生した魚の研究から明らかになってきた。魚でもある条件を作ると、天敵から身を守るために備わった脳の「扁桃(へんとう)体」が暴走し、うつ状態になることが分かってきたという。
■発症メカニズムを解明その発症メカニズムは、天敵に出合うと強いストレスホルモンが出て、それが「扁桃体」の活動を活性化し、不安や恐怖の記憶として脳に残りやすくなる。それにより、天敵から身を守る行動に繋がり、生き残る確率を高めてきたのだという。
ところが、こうした不安や恐怖が長期間続くと、扁桃体が暴走を始めて脳が萎縮していき、うつ病になるというのだ。
さらに2億2千万年前に誕生した哺乳類は、扁桃体を暴走させる新たな要因を生みだした。群れを作り外敵から身を守る社会性を発達させたことが、孤独に弱くなり、うつ病になりやすくなった。実際、チンパンジーは長期間群れから離されると、孤独に耐え切れず、うつ病になるという。
そして700万年前に人類が誕生。脳を進化させたことで高度な知性が生まれ、文明社会への道を切り開いてきた。しかし、この繁栄は、皮肉にも人類がうつ病になる引き金を引いていた。文明社会によって社会が複雑化し、人間関係が一変したことが、扁桃体を暴走させ始めたという。

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背景に格差拡大と対人関係の複雑化紀元前のメソポタミア文明で、人類最初のうつ病の記録が残っているという。富を持つ権力者が現れ、貧富の格差が激しくなったことが原因、だという。
今でも狩猟採集で暮らす原始共同体のアフリカのある部族。獲物は共同体内で完全に平等に分けられるという。この部族を米国の大学が調査した結果、うつ病患者はゼロで、うつ病になる要素も非常に低いという結果が出た。
この調査をした米国の研究者は、公平や平等というのは心の安定には非常に大事な要素だと語る。ある実験で、自分が明らかに損をしたケースと、逆に明らかに得をしたケース、ほぼ平等・公平な結果を得たケースのそれぞれについてストレスの度合いを測定したところ、損をしたり得をした場合に強いストレスが発生する一方、平等・公平なケースはストレスが皆無--という結果を得たという。
また、「立場の弱い人は常に強いストレスにさらされている」とも語る。比較的自身の裁量で仕事ができる範囲が広い専門職や技能職に比べ、ノルマや上司の厳格な管理の下に置かれている営業職や非技能職の職業グループの人たちの方が、うつ病が格段に多いという調査結果もあるという。
現代人にうつ病が増えているのは、格差の拡大や対人関係上のストレスの増加が原因、との結論だ。
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生活改善療法で薬漬けから解放最後に、米国で最近注目されているTLCと呼ばれる生活改善療法を紹介。基本的には規則正しい生活と定期的な運動をするというだけのものだが、ある患者は「長年薬を飲んでいたが、この治療を始めて1年で薬から解放されました」と話していた。薬漬けにするだけの日本のうつ病医療に警鐘を鳴らしている。