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「伝説の居酒屋」岸田屋探訪記

Posted by fukutyonzoku on 09.2013 日記 3 comments 0 trackback


元祖グルメ漫画「美味しんぼ」のコミックス第1巻にも登場する東京・月島の居酒屋「岸田屋」の暖簾を初めて潜ってみた。「居酒屋大全」などの居酒屋関連の著書が多数あるグラフィックデザイナーにして「居酒屋評論家」の太田和彦氏は、この店を「日本三大居酒屋」の筆頭に挙げ、さらにこの店の牛もつ煮込みは「東京三大煮込み」あるいは「東京五大煮込み」にエントリーされているほどの逸品。「美味しんぼ」では、山岡にこの店に連れてこられたフレンチのミシュラン三ツ星シェフが牛もつ煮込みの美味さに驚愕する、というストーリーだ。「日本三大居酒屋」のうち東日本はここだけなので、「伝説の居酒屋」と言って過言ではないだろう。「食べログ」の口コミは200件を超え、平均評価点4.17という高評価の居酒屋なのだ。
http://s.tabelog.com/tokyo/A1313/A131302/13002239/

店は通称・もんじゃストリートの一番奥、4番街にあるが、当然ながらいつも行列ができている。当方はこの日19時前に店に到着。金曜日の夜とあってか既に店内は満席。屋外にも店側が用意した並び席に2組計4人がすでに着席し、店内の席が空くのを待っており、やはりお店が用意した膝掛け用毛布を膝に掛けて寒さを凌いでいた。

私の右横の並び席も徐々に人で埋まっていったが、間もなく、私のすぐ前の若い男2人組が、寒さに耐えかねたのか待つのを諦めて列を離れたこともあり、30分ほどで入れた。


熱燗と「噂の」牛もつ煮込み

■店内は狭く、昭和レトロの雰囲気

店内の造作は、客同士が向き合うコの字形のカウンターがメーンで、20人も入れば一杯になる。当方はカウンターの角の席に案内された。冷えた身体を温めるにはやはり熱燗。銘柄はいくつかあったが、実は熱燗は安い酒ほどうまいので、一番安い松竹梅にした。熱燗に酒の肴はもちろん「東京三大煮込み」の一角とされる牛もつ煮込み。それから肉豆腐(半分)。かなりボリュームがあるので一人なら半分がちょうどよい。その他、鮭ハラス焼、〆に鰯つみれ汁で計2230円はお得。昭和レトロの雰囲気で、厨房からコの字形カウンターの間に伸びる通路は幅1㍍程度しかなく、客の会話は他の客にほぼ聞こえてしまう距離感。接客は女将さんと娘さんら若い女性二人で、みな愛想がよい。女将さんは人柄が抜群に良く、まさに下町のお母さんといった体。実の娘さんがここの看板娘で、なかなかの美人。彼女が噂の「月島のジャンヌ・ダルク」(太田和彦氏)か…。

■牛もつ煮込みだけではない


肉豆腐


鮭ハラス焼


鰯つみれ吸物

肉豆腐は半分でもボリューム満点。鮭ハラス焼は切り身の串焼きが2切れ、これは表面のカリカリ具合と中身の脂の乗りのバランスが抜群で、旨い! これがこの日食べたツマミの中で一番だった。鰯のつみれ汁もまあまあよい。
肝心の牛もつ煮込みの味は正直、期待したほどではなかった。勿論まずくはないが、スタンダードな味といったところ。個人的にはこれを食べるためだけにここに通うというほどのものではないと思う。
同じく「東京三大煮込み」に列せられている北千住の「大はし」にも以前入ってみたが、私の好みからは少し甘すぎて、やや期待外れだった。
ラーメン屋もそうだが、期待し過ぎていくと裏切られることが多い。厨房を仕切っていたオヤジさんが亡くなってから味が落ちたとも聞くが、当方はこの日が初めてだったので、以前とは比較のしようがない。

ちなみに、これまで私が食べたもつ煮込みの中で一番うまいと思ったのは、常磐自動車道柏インター傍、国道16号沿いのもつ煮定食屋「うわさの太郎」のもつ煮込み。ただし、夜はすぐにモツが売り切れて閉店するので要注意だ。

東京にうまいラーメン屋がない理由

ラーメン屋も東京の有名店はほぼ試しているが、最近評判だという店はミックススープなどで技巧に走り過ぎていて、基本を疎かにしている感が強く、正直うまい店が少ない。恐らく水が悪いせいだろう。スープには他所から取り寄せた水を使ってる店もあるようだが、実はスープの水だけでなく茹で水も決定的に重要。茹で水まで取り寄せた水を使えばコスト的に合わないため、茹で水まで取り寄せた水を使っている店はおそらくないだろう。米を炊く際も同じなのだが、乾いた米や麺が最初に吸い込む水は味を決める上で決定的に重要なのだ。地方の特に米どころで食べるご飯は、なぜこんなに上手いのかと不思議に思った経験はないだろうか。そんなに高い米ではなく、炊飯器もごく普通であるにもかかわらず、だ。それは水の違いであることが多い。

若い勘違いカップル

岸田屋に話を戻すと、私の席の両隣は
どちらも若いカップルだった。そのうちの一組は今風のお洒落なカップルで、二人とも狭いカウンターに腰を降ろしている間中、帽子を被ったままで、女性の方はスマホでゲームをしていた。ここは「和民」ではないのだ。外にはまだ寒さを堪えて順番待ちをしている客も大勢いるのだ。場の空気を察することができず、場の空気を楽しもうともしない若造どもが物見遊山に押し寄せるようでは、残念ながらある種の観光スポットに成り下がっていると言わざるを得ない。もし、いつでもフラっと入れて、この料理にこの値段なら間違いなくいい店だろうけれど。さらには「月島のジャンヌ・ダルク」とゆっくり会話でもできれば、通い詰めることは間違いないのだが…。

(注)この項の写真は全て「食べログ」から拝借しました。