fc2ブログ

日本人の脳特性とサッカー(FOOT×BRAIN)

Posted by fukutyonzoku on 28.2014 スポーツ 0 comments 0 trackback


9月27日深夜にテレビ東京で放送された「FOOT×BRAIN」は、脳科学者の中野信子氏をゲストに迎え「日本人はサッカーが苦手!?」をテーマに、日本人の脳の特性を分析した。中野は、「気合」で脳が育ったりはしないので、その人の脳に合ったトレーニング法や勝ち方があるといい、日本人の脳の特性に合った指導方法を伝授した。
これが「目から鱗」の分析が盛り沢山で、実に面白かった。
http://www.tv-tokyo.co.jp/smp/program/detail/21594_201409272330.html

日本人は世界一の心配性

日本人の脳の特徴その1は「世界で一番心配性の人が多い」こと。中野によると、何となく心配性の人が多いのではなく、それは遺伝子レベルで決まっている。東洋人は心身の安定性に関与するセロトニンの量を調整する「セロトニン・トランスポーター」の機能が弱く、セロトニンの量が少ないのだという。このため、心配性の人の割合が東アジアでは約70%を超え、特に日本人は80%を超えている。この割合は世界で日本人が最も高いという(米国では4割台? ラテン系はもっと低い)。
セロトニンの受容機能が低いということは、もしかしたらてんかん質(キレやすい)やヒステリックな人が多く、うつ病や自殺が多いこととも関係しているのかもしれない。

世界一正確性を重視、直感を嫌う

日本人の脳の特徴その2は「世界で一番正確性を重視する」。中野氏によると、人は反射的なXシステムと計算的なCシステムの2つの意思決定システムを持っている。日本人が最優先で考えるのは正確性で、Cシステムの意思決定に従おうとする。秒単位で正確な山手線などの鉄道運行などは、恐らく日本人にしかできないとか。逆に、反射的直感的に判断することは苦手で、これがサッカーの判断の遅さや決定力不足の原因かもしれないというのだ。
日本企業は会議ばかりやって判断しない、経営判断のスピードが致命的に遅いとよく批判されるが、この脳の特性とも関係しているのかもしれない。

世界一チャレンジが苦手な民族?


日本人の脳の特徴その3は「世界で一番失敗を嫌う」。快感や幸福感に関与するドーパミン、そのドーパミンと結合して脳に情報を伝える「ドーパミン・レセプター(受容体)」。ドーパミンを脳に伝えるスイッチの入り方が人によって違い、入りやすい人は快感や満足感を得やすいのだという。逆に入りにくい人はたくさんのドーパミンが必要で、常に刺激を求めてチャレンジしないと満足できない脳になっている。
日本人はこのスイッチが入りやすい人が多い。つまり、満足感を得やすい半面、チャレンジを嫌う民族だという。低い人の割合は日本人には1%程度しかいないのに対し、欧米や特にラテン系の南米には4割以上と多い。

ナビゲーション・ニューロンを鍛えよ

「心配性で失敗を恐れ、チャレンジを嫌い、瞬間的な判断が遅い」--この日本人の脳特性は、やはりサッカーには致命的に向いていないということの再立証のようにも思える。
しかし、中野氏は「失敗してもチャレンジの失敗ではなく、日常のことと捉える練習を重ねることで克服は可能」だという。想定外のチャレンジを強要するのではなく、全てを「想定内」だと考えるよう訓練することが日本人には必要だというのだ。
また判断が遅いことに対して中野は、「ナビゲーション・ニューロン」を鍛えることを提案。ナビゲーション・ニューロンは、無意識で体の動きを決める神経細胞のことで、同じことを繰り返すことで機能がアップする。つまり、一流選手がみなやっているように、考える前に体が自然と反応するようになるまで反復練習を繰り返し、体に覚え込ませるしかないのだが、これには真面目で努力家の性格がプラスに働くのだ。

「アメとムチ」でなく「アメとムシ」

また中野は、あるマウス実験を紹介。T字路で右に曲がれば電気ショック、左に曲がれば餌がある。最初に右に曲がって電気ショックを体験したマウスはその後、どうするか。今度は左に行くのかと多くの人は想像してしまうが、実際にはそうではなく、そのマウスはもうT字路の下の入り口で動かなくなってしまうというのだ。つまり、大きな精神的ショックを先に受けてしまうと、餌を獲りに行こうとする意欲を失ってしまうというのだ。
このことから、指導者に対しては「アメとムチ」ではなく「アメとムシ(無視)」が有効だという。ムチ(叱責)は(特に子供に対して? )意欲をなくすリスクが大きい。恐らく真面目で失敗を恐れる日本人にはなおさらなのだろう。
指導者はもっとたくさん褒め、叱りたくなっても叱らずに無視すればよい、という。褒められず無視されれば、子供やプレーヤーは「どうしていつも褒めてくれるのに褒めてくれないのだろう」と自分で考えるようになるから、教育効果もこちらの方が大きいのだとか。

数千年安定が続いた「蛸壺社会」

日本人の生真面目で失敗を恐れるがゆえに保守的で努力家で、さらには仕事が正確で時間にうるさい性質は、社会的に形成されたものだと思っていたが、実はそうではなく脳のDNAレベルで決定づけられていたというのだ。日本人に自殺が多いのも、心配性で失敗を恐れるという内向的な遺伝的性格が原因ということになるのだろう。
日本は非常に安定した社会を数千年という長い間保持し続けてきた世界でも稀有の民族である。安定した「蛸壺社会」が長い間にそういうDNAを選んだり(適者生存)、或いは少しつづ変えたりしてきたという相互作用も恐らくはあったのだろう。
スポンサーサイト