消費税率の10%への引き上げ時に、外食を除く食料品を8%に据え置く軽減税率の導入が自・公協議で決着した。
日本の消費税率は20%を超える欧米の付加価値税率より低いことは周知の事実だが、実は税率が低い割には税収ウエイトは比較的高い。
以下は、主要国の税収全体に占める消費税(付加価値税)の税収ウエイト(カッコ内は基準税率)。
フランス:39.5% (20%)
ドイツ :46.7% (19%)
イタリア:37.1% (22%)
イギリス:41.3% (20%)
スウェーデン:38.4%(25%)
日本 :30.7% (8%)
この原因は、日本は他の基幹税収(所得税、法人税)が過去の減税や景気悪化の影響で税収が落ちていること、加えて日本は食料品等の軽減税率が未導入であることもある。日本は食料品の消費税率が8%のままなら、主要国の中では低いとも言えない。

例えば、各国の食料品税率は英国、カナダ、オーストラリア、メキシコはゼロ、スイス2.5%、台湾、ポルトガル、チェコは5%、フランス5.5%、オランダ、ベルギーが6%、ドイツ、スペイン、ポーランド、シンガポール、タイが7%ーーとなっている。
軽減税率を導入するなら、8%への据え置きでいいのか、という議論が殆ど聞かれなかったことが不思議だ。
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法人税率引き下げの狙いは外形標準課税導入の隠れ蓑 法人税率の引き下げと同時に赤字企業にも課税される外形標準課税が導入される。実は、大企業の殆どは複雑怪奇な租税特別措置(租特)を駆使して節税して、法人税を殆ど支払っていない。例えば日本最大の企業であるトヨタ自動車は法人税を過去5年間、1円も払っていない。
つまり、大企業にとっては法人税率が上がっても下がってもほとんど影響はない。財政当局にとっては、法人税率を下げても税収はそれほど減らない(逆に言えば、仮に法人税率を上げても税収はそれほど増えない)ことを財務省はわかっている。だから、法人税率引き下げについてはさほど抵抗はないし、むしろ税率を下げることで、国内外の経済界に安上がりのアピールができるメリットがある。
財務省にとって法人税率引き下げの本当の狙いは、それとのバーターである外形標準課税の導入だろう。つまり、中小零細企業をターゲットにした課税ベースの拡大である。今回の法人税率引き下げは外形標準課税導入との差し引きで「税収中立」とされているが、恐らく差し引きで増税となる可能性が高いと私はみている。
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自営業者のどんぶり勘定にメスとはいえ、日本の自営業者はこれまで「クロヨン」「トーゴーサン」と言われるように税務署の捕捉がユルユルで、過保護にされてきた。中小零細企業は法人税から逃れるための見せかけの赤字企業が殆どだ。経営者の家計とどんぶり勘定で、新車購入とかガソリン代、備品購入などの本来は家計支出であるものを会社の経費として落とし、経費を膨らませることで企業収支を赤字にするのだ。
それは過去の自民党の田中派的選挙対策でもあった。そこにようやくメスを入れるという意味では、景気にはマイナスかもしれないが、公平・中立という税制の原則に鑑みれば、本来はもっと早く正すべきだった歪みと言えよう。
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