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地方の鉄道・路線バスの赤字は問題か

Posted by fukutyonzoku on 15.2016 公共政策 0 comments 0 trackback
全国の地方自治体が直営、あるいは出資する第3セクターが運営する鉄道や路線バスは、全体の約8割が赤字に苦しんでいるという。
しかし、こうした公共交通インフラが赤字になるのは、よく考えれてみれば当たり前だろう。そもそも黒字になる路線なら民間がやっているはずだ。民間企業では採算が合わないためどこも手を出さないが、それでも住民の「生活の足」として公共政策上の必要がある(と自治体と議会が判断している)から赤字覚悟で維持しているのだ。
実際、欧米でも公営の路線バスや鉄道は赤字が普通だ。
http://www.newww-media.co.jp/backnumber/y2003/200309/article03.html

公営の病院も同じだろう。その多くは赤字だが、そもそも黒字になるのなら自治体が経営する必要はなく、民業圧迫でさえある。赤字でも自治体が踏ん張って維持しているのは「医療空白地域を作らない」という福祉政策上の要請があるからだ。

最近では、第三セクターやPFI(民間資金活用)等の半官半民の手法もいろいろある。民間に補助金を与えるやり方や、整備新幹線や富山ライトレールなどのように上下分離(鉄道敷設は官、運行は民)といったやり方もあるが、要はどういうやり方が財政負担が少なく、かつ効率的な運営ができるのかという問題であって、いずれの場合も自治体が税金を投入して運営を支えていることに違いはない。
分かりやすい比較として道路がある。道路は原則として財政負担で建設され、メンテナンスもされているが、誰も「赤字」を問題にはしない。高速道路や一部の有料道路を除く一般道は民間が通行料金を取って運営するのは困難だが、同時になくてはならない基礎的な公共インフラだと多くの人が納得しているからだ。

自治体の財政負担には自ずと限度はある。まして、高齢化や過疎化で年々地方の自治体運営は厳しさを増しているし、今後ますます厳しくなっていく。しかし、道路建設・補修の支出や自治体病院の赤字をさほど問題にしないのであれば、公営バスや鉄道の赤字だけを殊更問題視するのはバランスを欠いていると思う。むしろ、地方自治体の実質負担がゼロだからといってかつて過疎地にも乱造された誰も通らない「スーパー農道」などの方が遥かに無駄で、補修費用がかかり続けていることを考えても問題だ。
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