◼️いよいよ絶滅間近? 毎日新聞は今月15日の夕刊トップ記事(東京本社版)で、例年11月に始まるウナギの稚魚(シラスウナギ)漁が今期は極度の不漁で、中国や台湾を含む国内外での漁獲量が前期の同じころと比べて1%程度と低迷している、と伝えた。漁は4月ごろまで続くが、このまま推移すれば過去最低の漁獲量となりかねないという。

国際自然保護連合(IUCN)は2008年、ヨーロッパウナギをレッドリストの絶滅危惧カテゴリー最上位の絶滅危惧1A類(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い種)に指定。これを受けて欧州連合(EU)は翌年、資源保護を理由にヨーロッパウナギの輸出を実質的に禁止した。
ニホンウナギは2013年に環境省のレッドリストで、14年にはIUCNのレッドリストで、それぞれ1Aよりワンランク下の
絶滅危惧IB類(近い将来における野生での絶滅の危険性が高い種)に指定された。このカテゴリーにはトキやタンチョウヅル、アジアゾウ、ラッコなどが入っている。アメリカウナギも同じ絶滅危惧1B類に、インドネシアなどにすむビカーラ種はその下の準絶滅危惧種にそれぞれ指定されている。つまりは、これら国際的な絶滅危惧種の肉がスーパーやファストフード店で普通に売られているようなものなのだ。◼️
抜け穴だらけの規制 国内で流通しているウナギはほとんどが養殖だが、養殖業者は天然のシラスウナギを採捕または輸入し、養殖池で育てて売っている。国内の養殖業は国(水産庁)の許可制で、資源保護のため毎年、養殖数量(池入れ数量)の上限を定めており、業界団体がそれを末端業者に配分している。この規制は罰則付きのルールで、業者にも池入れ数量の報告義務があるのだが、そもそもこの上限規制がユル過ぎる上に、虚偽報告が後を絶たないと言われている。つまり、実際には規制枠以上に養殖し、販売されているのだ。
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香港が日本への密輸拠点 加えてニホンウナギは、ヨーロッパウナギと違って(日本政府の強力な反対もあって)絶滅危惧種の国際取引を規制するワシントン条約の規制対象にはまだなっていない(近い将来に対象になる可能性が高い)。ただ、日中韓台の間では輸出入数量の抑制・削減を取り決めており、かつて日本への輸出が多かった台湾も今はシラスウナギについては全面禁輸している。
ところが、この日中韓台の取り決めは法的拘束力がなく、しかも香港は入っていない。このため香港が日本への一大輸出拠点と化している。香港へはニホンウナギとその稚魚だけでなく、代替品種として注目されているビカーラ種なども集まってくる。さらには、ワシントン条約で国際取引が規制されているヨーロッパウナギまでが、EU域外の北アフリカから密輸されているという。そもそもヨーロッパウナギが絶滅の危機に瀕するほど激減した原因も、日本への輸出の増加だった。

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反社会的勢力も関与 そうして世界中から香港に集まったシラスウナギのほとんどは日本へ輸出されるが、一部は密かに中国大陸の養殖池へ運ばれ、育ててから加工され、冷凍の蒲焼き(ウナギ加工食品)として再び香港経由で日本へ輸出される。中国大陸のウナギ養殖技術や蒲焼き加工技術は日本の業者が持ち込んだものだ。また、香港ルートの密輸には日本の反社会的勢力が深く関わっているとみられている(摘発された案件もある)。
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流通するウナギの大半が違法商品 そうして日本で高値で売れる「白いダイヤ」(シラスウナギ)とウナギの加工食品は、世界中から香港を経由して日本へ集まってくる。日本のスーパーなどで流通しているウナギの大半は、こうして密輸されたり無許可で養殖されたりした違法商品なのである。日本の消費者の多くはそうした実態を知らずに「高くなったね」と品薄と価格高騰に不平を言いながらも、普通に買えることに何の疑問も持たずに買って食べている。
しかも、本来ウナギは秋から冬にかけてが一番脂が乗っている旬なのに、夏場の土用の丑の日が突出した需要ピークとなっている。江戸時代の鰻屋が売れない夏場の宣伝として平賀源内が考案したとされる「土用の丑の日は精のつく鰻」というおかしな風習なのだが、日本人は今も有り難くその風習を受け継ぎ、夏場の需要ピークに出荷を合わせる不自然な養殖サイクルをつくり出し、世界中のウナギ資源を食い尽くしている。結果的に国際的な闇取引と資源枯渇に加担している自覚はほとんどなしに、である。
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