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イチローの名声は「過大評価」なのか

Posted by fukutyonzoku on 23.2019 スポーツ 8 comments 0 trackback


◼️イチローは過大評価?

イチロー称賛の「大本営発表」には生来の天邪鬼根性がムズムズしていたところに、米スポーツファン専用サイト“FANSIDED”でこんな記事を見つけた(日付は今年1月7日)。

“Ichiro Suzuki: Baseball Icon, Overrated Player”
(鈴木イチロー:野球の偶像、過大評価された選手)

記事によれば、米野球データベース「Fangraphs」によるイチローのMLB通算WAR(Wins Above Replacement)は57.9で、イチローがMLBデビューした2001年以降で11位という。WARとは、チームの勝利への選手ごとの貢献度をセイバーメトリクスにより数値化した総合評価指標。11位は立派な順位だが、要は、米野球殿堂入り確実と言われるイチローの名声に比べて物足りない順位だと言いたいのだ。
ちなみに同時代のホームラン打者、バリー・ボンズの通算WARは164.4。

◼️長打が少なく出塁率も低い

イチローのWARが低い理由はこうだ。

イチローのMLB通算安打3089本は歴代2位、通算打率.311は01年以降で6位(通算5000打席以上の打者で)。ボンズの通算安打数は2935本、通算打率は.298とともにイチローより劣るが、ボンズは単打が安打全体の51%なのに対し、イチローは81%が単打だ。本塁打に至ってはボンズがMLB記録の762本なのに対し、イチローは117本に過ぎない。
また、ボンズの平均出塁率は.444でイチローの.355を大きく上回る。ボンズは一発のある怖い打者なので敬遠や四死球が多く、出塁率が高い。イチローの平均出塁率.355は同50位で、「安打製造機」としては驚くほど平凡な数字だ。少なくとも打撃面ではボンズの方が遥かに価値があるというわけだ。ちなみに、オリックス時代のイチローの通算打率は.353。平均出塁率は.421で、王、落合に次ぐ歴代3位だ。3番や4番を打っていたこともあり、本塁打25本を打った年もある。長打率も平均.522だったが、メジャーでは平均.402。メジャーでイチローは長打が激減したうえに、四球をあまり選ばず、打率の割りに出塁率は高くない。リードオフマンとして最も大切な「出塁してチャンスを作る」という仕事の面ではイマイチだった。全盛期の前半を日本で過ごしたハンデは差し引いて考える必要があるし、守備や走塁の貢献度も大きいが、それにしても「イチローは実際の価値より過大評価されている」というわけだ。
同じ「本音」は米野球ファンやメディアの中にも少ないからずある。「イチローはチームの勝利より個人記録(安打数)を優先した」と。実際、マリナーズはイチローがデビューした2001年に地区優勝して以来、プレーオフ進出を逃し続けていることもこの印象に含まれている。もちろんこれはイチローだけの責任ではないのだが。

◼️米野球文化への貢献

それでも、イチローはやはりレジェンドなのだと思う。

・2004年の262安打はMLBシーズン最多安打記録を84年ぶりに更新
・10年連続シーズン200安打以上はMLB記録を108年ぶりに更新(ギネス世界記録)。
・NPB/MLB通算4367安打はプロ野球通算安打ギネス世界記録
・MLB通算3089安打はピート・ローズに次ぐMLB歴代2位
・NPB/MLB通算3604試合出場もプロ野球世界最多記録
・ゴールドグラブ賞10年連続受賞はMLB史上初(10回は外野手歴代2位)。NPB/MLBで17年連続はもちろん前人未到。

これらの記録以上に、技術とスピードを武器にパワー(ドーピング?)全盛の巨漢メジャーリーガーたちと互角以上に渡り合うスモール・ベースボールの魅力を、米野球ファンに鮮烈に植えつけたからだ。「魔法使い」と称された卓越したバットコントロール、あっと言う間に一塁ベースを駆け抜ける内野安打、全米の度肝を抜いた「レーザービーム」、「スパイダーマン」の異名がついたホームランキャッチ……。MLBで日本人初の野手として、米野球文化にカルチャーショックを与え、多様性をもたらし、特に子供たちに新たなスーパースター像を創造したことが、イチローの最大の貢献だったのだと思う。

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