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衆院選バラマキ合戦の経済政策的意味

Posted by fukutyonzoku on 25.2021 政治・経済 0 comments 0 trackback
 衆院選で野党各党は、時限的な消費税の5%への引き下げ(税収にして年間約10兆円減=立民、共産、維新、国民)や廃止(れ新、社民)、特別定額給付金の追加実施(共産、国民)、年金保険料の支払いの一部免除(維新)というバラマキ政策をこぞって公約しているが、呆れてモノも言えない。
https://www.nhk.or.jp/senkyo/database/shugiin/2021/pledge/policy/02/

 昨年1年間に家計貯蓄は前年比36兆円増えた。国民一人一律10万円という特別定額給付金(総額12.6兆円)は殆ど消費には回らず、家計貯蓄は給付の3倍近くも増えたのだ。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO73669720X00C21A7EP0000/ 
 日本より大規模な給付を実施した米欧の家計貯蓄超過額はさらに大きく、米国は2020年第1四半期以降の累積で2.5兆ドル(約275兆円)、欧州は個人より企業への投融資が多いため米国ほどではないが、それでも6800億ユーロ(約90兆円)に膨らんでいる。
https://news.yahoo.co.jp/articles/519cca942b50c4b1bf844a95f1f908b2575cf8f2?page=1
https://www.provej.jp/column/cv/savings/
 それでも定額給付金は、時間のかかる審査を省いて困窮している人に現金を迅速に届ける、という緊急避難的な意味は少しはあったかもしれないが、コロナ禍発生から1年半余りが経ち、経済正常化を目指す今、同じバラマキを繰り返す政策に果たしてどれほどの正当性があるだろうか。
 消費税は軽減税率導入時にも「税率軽減の恩恵は富裕層ほど大きくなる」との批判が経済学者や専門家の間では多かった。基礎食料品の消費においても富裕層ほど消費額が大きいからだ(このことは消費税が必ずしも所得・資産に対して逆進的ではないことの裏返しなのだが)。特別定額給付金の追加実施は昨年と同様、多くが貯蓄に回る可能性があり、消費税率の時限的引き下げも同じことになる可能性が高いだろう。個人消費を安定的に増やすには、所得・資産環境が改善し、将来不安を払拭する以外に方法はないのだと思う。
 しかも、どの党も財源は国債、つまり将来世代にツケを回す借金だ。定額給付を恒常化するのがベーシックインカム(BI)政策(維新が検討を公約)だが、BIは理論的には社会保障制度を廃止し、同制度にかかる政府コストを削減して財源を捻出することが大前提(現実には不可能)だが、財源が国債増発では単なるバラマキでしかない。困窮者対策が必要なら、本当に困窮している人だけにピンポイントで届けるのが筋であろうし、昨年のように公平性を無視してまでとにかく早く現金を届ける、といった雑な政策を実施する時期では最早ないはずだ。
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