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この国は財政規律を忘れてしまったのか

Posted by fukutyonzoku on 27.2022 政治・経済 0 comments 0 trackback
政府は、物価上昇に対応する総合経済対策の策定に伴う2022年度第2次補正予算案の一般会計を29.1兆円程度とする。地方支出や財政投融資を含めた財政支出総額は約39兆円、民間投資などを含めた事業規模は約71.6兆円という、大盤振る舞いだ。
 昨年度2次補正も財政支出55.7兆円、事業規模98.9兆円と過去最大級の景気対策を実施するなど、コロナ禍で大型補正予算編成が当たり前となっており、どうも政府も世論も感覚が麻痺してしまった感があるが、財源はほぼ国債の追加発行による借金である。この国の政府は世界一の累積債務を抱えている事実を、政府も国会議員たちも忘れたフリをしているようだ。

 今年度一次補正のエネルギー対策は12月までしか予算措置されていなかったため、来年1~3月分の追加措置として今回の2次補正の編成は予期されていた。とは言え、こんなに大規模な追加財政支出が本当に必要なのか。景気の底割れが懸念される状況ならまだしも、景気はコロナ禍が落ち着いて行動制限が緩和されたことで、実際には回復基調にある。
 インフレ対策は通常、中央銀行の仕事で、欧米がやっているように量的引き締めと利上げが常識的な手段だが、我が日銀は世界と逆光する超金融緩和を続け、輸入物価を押し上げる円安に拍車をかけている。インフレ対策なら、財政は経済学の常識で言えば緊縮政策となるはずだ。エネルギー価格を引き下げるための補助金はともかく、財政拡張は基本的にインフレの火に油を注ぎかねない。金融政策も財政政策もインフレ対策とは真逆のことをやっている。

 予算の中身にも首を傾けたくなるものが少なくない。Go To トラベルや同イートなどの観光・飲食振興は必要か。コロナ禍が落ち着いて水際対策が緩和された今のタイミングなら、放っておいてもインバウンドを含め観光や飲食需要は急回復するはずだ。「企業の輸出拡大」対策も円高不況時の対策なら分かるが、30年ぶりの円安水準という輸出企業にとって強い追い風が吹く中で、必要な対策とはとても思えない。
 リスキリング(学び直し)など人への投資や子育て対策、脱炭素政策の加速、食料安保などのメニューも並んでいる。これらは確かに必要な政策だろうが、補正予算でやるべき政策か。補正予算は本来、大規模な災害発生など予期せぬ予算需要が生じた際の追加予算措置のはずだが、これらの政策メニューはいずれも中長期的に必要な政策であり、当初予算で正面から措置すべきものばかりだ。どさくさ紛れで補正に潜り込ませるような予算ではない。

 同じように財政の大判振る舞いをやろうとした英トラス政権は、バイデン米大統領が「間違いだ」と明確に批判するなど国内外からの猛烈な批判と金融市場の反乱を受けて政策を撤回、就任わずか44日で退陣した。実は英国より日本の方がはるかに財政は酷い状態なのに、この国ではこれといった批判の声は聞こえない。金融市場の反乱も起こらない。なぜなら、この国の金融市場はすでに政府のコントロール下にあり、「炭鉱のカナリア」と言われる市場機能が殺されてしまっているからだ。日本に比べたら英国の方がはるかに健全だ。
 もし憲法改正をやるつもりなら、ドイツのように憲法で政府に財政規律遵守をできるだけ具体的に義務付け、諸外国のように独立財政監視機関を設置すべきだろう。まあ、それも政府や国会にしかできないことだが。せめて、そのぐらいの良識は見せてほしいものだ。財政破綻する前に。
https://news.yahoo.co.jp/articles/0df30ef994c21ddf747be054f8f1c9efc934a3a0
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA272XV0X21C22A0000000/
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