ドイツは最後に残っていた原発3基を停止し、「脱原発」が完了した。連立与党である緑の党や市民団体は祝賀ムードだが、世論調査では、ドイツ国民の約6割が脱原発に反対しているという。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR12CM80S3A410C2000000/ ロシアのウクライナ侵攻の影響で、発電源や暖房燃料としても大きな比重を占めていたロシア産天然ガス供給がストップし、「エネルギー安定供給が脅かされているこのタイミングで原発を止めても大丈夫なのか」「電力料金がさらに上がるのではないか」という国民の不安が高まっているからだ。特に経済界には「このままでは製造拠点を電力料金が安く供給が安定している国に移転せざるを得なくなる」との声が高まっているという。
さらには脱原発は脱炭素政策に逆行しているとの批判も根強い。CO2排出量の少ない原発と天然ガス火力発電の発電ウエイトが急減しているのを補うために、CO2排出量が多い石炭火力の発電ウエイトが発電全体の3分の1にまで高まっているからだ。2030年脱石炭火力、再エネ8割という脱炭素目標に逆行しているというわけだ。
ただ、ドイツは天然ガスだけでなく原発の燃料であるウランもロシア産の依存度が高く、脱ロシア依存の面からは脱原発が必要だという。なかなか複雑だ。
エネルギー安全保障、経済性、脱原発、脱炭素、脱ロシアは「こちらを立てればあちらが立たず」という複雑なトレードオフの関係にあり、どの政策を優先するかという困難な選択を迫られている。ドイツは欧州の中でも急進的な脱原発、脱炭素目標を掲げながら、エネルギーのロシア依存度が高かったため、より困難な政策選択を迫られているということだ。
それでもドイツは石炭を自給できるうえに、欧州全体が送電網で繋がり電力を相互融通するエネルギー安保体制の中にいる。島国のために周辺国と電力融通ができず、国産のエネルギー資源もない日本の条件はドイツ以上に厳しいのだが……。
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