今朝のNHKニュースによると、大阪はコロナ疑い(血中酸素濃度低下)患者の救急搬送は病院の受け入れ先が4時間も見つからない状態になっているという。第一波の時と同じような医療崩壊状態だ。
第一波時より既に感染者数は何倍かになっているし、変異株感染により重症化する患者の割合も増えているという。日本の人口当たり病床数は世界一というが、人口当たりの医師数はOECD最低レベルで、重症者に救命治療するICU病床は少ない。病院の8割を占める民間病院の9割以上は小規模病院やクリニックで、おそらく感染症医もいなければICU、人工呼吸器やECMO等の設備も十分ではない。小さな病院が多いので総病院数は断トツの世界一だ。こういった小病院で無理にコロナ病床を作るのはかえって危険だとの指摘もある。
https://prtimes.jp/main/html/rd/amp/p/000000021.000046782.html それでも日本の人口当たり感染者数は、ワクチン接種によって感染者数が激減したイスラエル、英国、米国等よりも依然低い。それでも崩壊してしまう日本の医療の脆弱性は、10年以上前から既に崩壊状態だったのに抜本的な対策がされてこなかった結果に過ぎないと思う。
これは医療に限らない。日本の人口当たり公務員数は中央も地方もOECD最低レベルなのに、さらなる人員削減でボロボロ。教育費や子育て支援の公的負担もOECD最低、公的研究開発費も同様で、特に基礎研究部門は削られ続けてきた。産学の研究力や技術力は劣化の一途だ。ノーベル賞を受賞した山中伸弥教授の研究予算でさえカットされそうになったほど。少子化が止まらず、デジタル政府が進まないのも無理はない。介護インフラや生活保護の受給率や補足率も先進国最低レベルで、社会保障もボロボロだ。国防費も安倍政権下で少し増えたが、これほど厳しい安保環境の中にあってGDP比予算は相変わらず主要国の半分以下だ。公共インフラである統計部門の予算や今回のようなパンデミックに対応する保健所など、一見不要不急に見える予算は削られ続けてきた。国家の殆ど全てがボロボロなのだ。
それらの根本的な原因は、日本は財政の極度の悪化と予算削減という弥縫策の継続によって「公」が壊れてしまったからだと思う。政治は過去10年以上、予算削減と借金増しかやらなかった。国民が負担する税と社会保険料を合わせた国民負担率は依然主要国の中で低い方だ。世界最高の高齢化率を考えれば、国民負担率が高くなければまともな公共を維持できないことは子供にもわかるはずだ。
ところが、こうした現状を正面から説明し、国民に負担増をお願いする政党は一つもない。未だに減税を公約に掲げる大都市の市長さえいる。国民の多くも消費税増税に批判的だ。消費税は逆進的な悪い税だと信じ込んでいる国民がいまだに多い。生涯所得比では累進的だとわかっているのに。悪い税ならなぜ先進的な民主主義国の多くで最大の基幹税になっているのかと問いたい。「金持ちから取れ」「大企業から取れ」と他人事だ。日本には大金持ちなど殆どいないのに。改善すべき点はあるにしろ、全体として法人税率も相続税率も主要国より高い。一時は下げ過ぎた所得税の最高税率もかなり戻っている。
第二次安倍政権以降、日銀の財政ファイナンスによって国は借金をいくらでも膨らませても大丈夫だ、増税は愚の骨頂だ、という誤った幻想がリフレ派によって振り撒かれた。その結果が世界最悪の累積政府債務であり、デフレ脱却の失敗だ。リフレ派とそれに乗った安倍政権は犯罪的な過ちを犯した。ぜひ首を並べて経済敗戦の責任を取ってもらいたい。
海外によく行く方や住んでいた方は肌感覚で理解している人が多いが、欧州などの税金の高さは日本の比ではないし、米国は消費税負担が少ない半面、個人所得税率や法人税率は高く、医療費などはかなり高額な民間保険に入っていないと普通の医療さえ受けられない。日本は国民も政治も真の危機から目を背け、ポピュリズムの罠に陥っている。いい加減目を覚まさないと、本当に手遅れになってしまう。
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