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地熱資源量世界3位の日本で地熱発電が進まない理由

Posted by fukutyonzoku on 18.2023 公共政策 0 comments 0 trackback
 火山国である日本の地熱資源量(2347万kW)は米国(3000万kW)、インドネシア(2779万kW)に次ぐ世界第3位だ。にもかかわらず、地熱発電の設備能力は米国、インドネシアが資源量順位と同じ1位、2位なのに対し、日本は、資源量が4分の1のアイスランド(580万kW)や7分の1のイタリア(327万kW)も下回る10位にとどまっている。人口37万人のアイスランドは電力供給の7割以上を地熱発電で賄っており、安価な電力を国民に供給している。人口規模が全く違うアイスランドとは単純に比較できないが、日本にとっては数少ない貴重な国産の再エネ資源なのに、なぜ開発が進まないのだろうか?
https://geothermal.jogmec.go.jp/information/plant_foreign/

https://www.globalnote.jp/post-3238.html

 結論を一言で言えば、原因は「温泉利権」との利害衝突である。日本は火山性熱源に温泉利権が張り巡らされ、温泉の枯渇を懸念する温泉旅館組合や地元行政の反対が強いため、地熱発電開発が思うように進まない。地熱発電の熱源は地下深い場所から汲み上げることが多いため、実際に温泉に影響があるかどうかはやってみないとわからないのだそうだ。
https://courrier.jp/cj/325542/?utm_source=yahoonews&utm_medium=related&utm_campaign=325542&utm_content=nippon

 日本の温泉地は全国約3000、源泉は2万7000もあると言われ、古くは約6000年前の縄文遺跡からも温泉の痕跡が見つかっており、古事記や日本書紀にも温泉に関する記述がある。温泉は日本古来の文化であり、今でも重要な観光資源だ。豊富な水資源と火山性熱源をともに有する結果、自然に湧き出る温泉が多く、それを頼りに旅館を経営する人々にとって、温泉資源の枯渇はまさに死活問題だろう。
 
 温泉の出る他国はなぜこうした問題があまり聞かれないのだろうか。
 米国では中西部のロッキー山脈の中に温泉地が点在する。私も留学生だった時に、米アーカンソー州の温泉リゾート地、ホットスプリングス(都市名が「温泉」!)を訪れる機会があり、公共の屋外温泉プールに入ったが、米国の「温泉」とはまさにこうした温泉を使った温水プールのことだ。せいぜいスパリゾート施設である。プールと言っても普通のプールのようにバシャバシャ泳ぐ人はさすがにおらず、利用者は高齢者ばかり。全員水着を着て、当然男女混浴で、ぬるめの温泉プールにゆったりと浸かっている。
 元々は先住民のネイティブ・アメリカンが湯治に利用していたらしいが、南北戦争の後にはここに陸軍・海軍病院が開設されたという。要は傷痍軍人の療養施設だ。19世紀後半以降、この地にはギャングが住み着き、市政も腐敗して違法カジノや売春がはびこったというが、第二次世界大戦後には浄化運動が起こり、1960年代には一掃された。湯治場として栄枯盛衰を繰り返しながらも、米国の温泉リゾートは基本的には怪我人や病人の療養や高齢者の保養という意味合いが大きく、入浴の習慣がそもそもない一般の人々のリゾートとしては定着していない。
 イタリアにも古代ローマ時代から温泉が普及していたことは、映画にもなった『テルマエ・ロマエ』でも描かれたが、やはり日本のような入浴文化はない。ただ、温泉に効能があることは早くから知られ、米国と同じように医療療養施設のプールやスパはあり、医療保険の対象にもなっているという。無料の露天温泉も多いとか。誰も施設開発をせず、自然に湧き出ている沼や川などが多いようだ。
https://www.adomani-italia.com/blog/column/onsen-1/

 そもそも日常的に入浴したり、温泉をこれほどよく利用する民族は世界でも日本人だけらしい。これほど多くの温泉地や温泉旅館があり、病気でもない一般の人々がこれほど温泉旅行を楽しんでいる民族は日本人以外にはないということだ。地熱発電設備が入り込む余地がないほど、日本人は地熱資源を温泉としてフル活用しているということでもある。温泉は健康にもよいので守るべき文化だろう。
 温泉が枯渇しない範囲で科学的に熱資源を管理しながら、地熱発電利用と共存する方法はないものかと思う。
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