高橋洋一氏の我田引水的為替論

Posted by fukutyonzoku on 10.2013 経済分析 0 comments 0 trackback
再び、ダイヤモンド・オンラインの高橋洋一氏「俗論を打つ!」。「為替再考!なぜ小泉・安倍政権時代には円安誘導に成功したか」(2012年1月12日)

1年前の記事ですが、たまたま読んでしまったので、コメントしておきます。

為替市場は需給関係で決まるのというのは一般論として正しい。しかし、後付けで、こうした需給を決める一つの要因だけで説明するのはどうかな、と思う。その場限りの説明でしかない。もっとも、マスコミで出てくるコメントはこの類の『滑った、転んだ』という話ばかりなので、辟易している
→ご指摘通り、現実の為替相場は様々な要因と思惑の集積で動く。ただ、短期的には一つの要因や思惑で大きく動くことがあることも事実。だからこそ大きく相場が動いた時には、その原因を探ろうとするのは、市場関係者にとっては当たり前。それが大きなトレンド変化のサインかもしれないのだから。相場変動で勝負をしているのはプロの為替ディーラーだけでなく、FX取引をやっている一般の人々も少なくない。そうした相場の関心事を小バカにするような言いぶりは、市場の機能や市場関係者の役割を本当には理解していない、元大蔵官僚の傲慢さの表れではないだろうか。

…これは、昨年11月4日付『為替介入効果が長続きしない理由 日米マネー量の相対比が円ドルレートを左右する』に書いたことでもある。十数年前にその考え方に行き着き、その後、知り合いの金融関係者に話したところ、ジョージ・ソロスという有名な投資家が使っているソロス・チャートと同じであるといわれた。そのような高名な人がいうのだから、だいたい正しいのだろうと思っていた。たしかに、同コラムに書いたように、プラザ合意以降の円ドルレートをかなりよく説明している
→昨年7月4日の当ブログ(やはり崩れたソロスチャート)でも紹介したように、日米のマネタリーベース伸び率の相対比較が為替相場の動きとほぼ一致するというソロスチャートは、高橋氏が「円安誘導に成功した」とうそぶく小泉・安倍政権時代(02~07年頃)には大きく乖離し、連動性を失っていた。リーマン・ショック後は逆方向に乖離している。ところが、日銀当座預金の超過準備を除いたマネタリーベースで比較した「修正ソロス・チャート」では、かなり連動性が高い。これは何を意味しているのだろうか。

「修正ソロス・チャート」が意味するもの

ドイツ証券の安達誠司氏が考案した「修正ソロス・チャート」が表しているのは、日銀当座預金の法定準備額+現金である。法定準備額は預金量に比例して決まるので、つまりは預金量+現金量を表していることになる。要するに、マネーストック(マネーサプライ=通貨供給量)とほぼ同じ概念である。超過準備、つまりはブタ積み分を差し引いているということは、量的緩和の影響を除外していると言い換えることもできる。
これらから導き出される論理的帰結は、為替相場、少なくとも過去10年以上にわたるドル円相場は、高橋氏らが指摘するようなマネタリーベースの伸び率に相関しているのではなく、実際に市中に流通しているマネー量(マネーストック)との相関が強いということだ。量的緩和の影響についても、マネーストックとの相関が切れている場合は為替相場にも影響を与えない--ということではなかろうか。

…竹中平蔵経済財政担当相や中川秀直自民党幹事長らの様々な努力の末に、日銀はマネーを増やすことになって、筆者が政権内で経済政策を担当していた小泉・安倍政権では、為替はその後の政権に比べて円安だった。これは意図した結果だった
→自分が内部で支えた小泉・安倍政権時代の好況期を「巧みな経済政策の成果」としてアピールしたいのだろうが、簡単に言ってしまえば、この時期はBRICSを中心に海外景気が絶好調で、日本もその恩恵に預かっただけのことだ。橋本龍太郎政権以来の「構造改革」の延長線上にある「小泉・竹中」路線の基本線は間違っているとは思わないが、構造改革の多くは成果が出るまでに時間がかかる。両政権下で経済が比較的好調だったのは、たまたま海外経済が活況を呈したこと、さらには、海外メディアからは(日本人主婦の総称としての)「ミセス・ワタナベ」が世界の為替相場をリードしているとまで言われたFXブームや円キャリー取引ブームも手伝って円安となった影響も大きかった。金融理論的に言い直せば、欧米の好況による金利上昇でゼロ金利に張り付いている日本との実質金利差が拡大し、他力本願的に円安となっただけのことだ。
むしろ小泉政権末期の06年3月に日銀は量的緩和を、同7月にはゼロ金利を相次いで解除し、安部政権下の07年1月には利上げまで行っている。「円安誘導」どころか、デフレから脱却したと見誤り、平時の金融政策に戻そうと利上げに舵を切っているのだ。両政権内にいた高橋氏はこの時期、なぜ日銀に強行に翻意を迫らなかったのだろうか?

なお、高橋氏らの単純な貨幣数量説に基づく錯誤については、以下のブログが明解に言い当てています。アゴラ:貨幣数量説と高橋洋一氏
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