「97年消費税増税で税収は減った」説は本当か?(その2)

Posted by fukutyonzoku on 07.2013 経済分析 0 comments 0 trackback
私が以前、このブログで書いた記事「『97年消費増税が原因で税収は減った』説は本当か?」(2012年02月16日)について、SynergyCatさんから1カ月余り前にご質問を頂きました。
質問は--
増税は税収減の主役ではないという理由で、 実質GDPへの影響の無さを絶対の根拠にされていますが、それはなぜですか? 1997年を境に名目GDPとデフレータは下がり続けています。ここを完全に無視している理由についても詳しく教えてください
」(http://fukutyonzoku.blog.fc2.com/?no=11&m2=res)
との内容です。
数日前までこの質問コメントに全く気付かず、返答が1カ月以上遅れになってしまいましたことをまずはお詫び申し上げます。丁寧なご質問ですし、同様の誤解が多くの方に広がっているようにも思えますので、返答したいと思います。SynergyCatさんにとっては今更 かもしれませんが、ご容赦ください。

GDPは実質値でみるのが「普通」

GDP成長率を実質値で論じていることにSynergyCatさんは違和感を持たれているようです。確かに、デフレ脱却が最大の政策課題となっている今では、名目値やデフレーター等の物価指標は注目される重要な指標になっており、政策目標自体が物価上昇率や名目GDP伸び率となっているので、その疑問は理解できます。
ただ、従来は名目成長率が注目されることは殆どありませんでした。経済成長率と言えば、実質GDP伸び率のことを指していたのです。ご指摘のように実質GDPを「絶対視」しているわけではありませんが、特段の事情がない限り、実質値を使うのが「普通」です。デフレが最大の経済問題になっている最近の日本を除けば、世界の常識と言っても差し支えないでしょう。
今回の議論の焦点は、97年4月の消費税増税前後の消費を中心とする経済状況や税収の点検です。当時はまだデフレが定着した状況ではなく、確認しましたが、実際に97年度のGDPデフレーターも微かながらプラス(前年比0.9%上昇)でした。僅かなプラスということは、実質値で論じても名目値で論じても殆ど変わらないということです。であれば、あえて名目値で論じるのは、少なくとも専門家の世界では逆に不自然と感じる人が多いと思います。

念のために、内閣府の四半期別GDPの推移について、直近の確報データで1997年(平成9年)前後の名目、実質両方のデータを再確認してみました。

◆名目値→
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h23/tables/23qom1n_jp.xls
◆実質値→
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h23/tables/23qom1rn_jp.xls

やはり、個人消費(家計最終消費支出)、GDP(国内総生産)の増減率ともに、名目値と実質値の推移に大きな違いはありません。

付言すれば、私の元記事では、実質GDPだけを論じているわけでもありません。個人消費にも言及していますし、財務省のサイトにもリンクを張りながら、費目別の税収推移にも触れています。税収はもちろん名目値です。特に消費税については、名目の個人消費と連動しているので、この推移を見れば、名目GDPの6割を占める家計最終消費支出(個人消費)の名目値の推移を見るのとほぼ同じことになります。

97年を境に名目GDPとデフレーターは下がり続けている?

次に、ご質問の後段で「1997年を境に名目GDPとデフレータは下がり続けています」とあります。確かにそういう大雑把な言い方をよく目や耳にしますが、この言い方は不正確です。
GDPデフレーターが98年以降下がり続けているのは事実ですが、実はピークは94年で、翌年からは既にマイナスに転じていました(前記の内閣府確報データで確認できます)。たまたま97年のみ例外的に微増となっているだけです。これは、消費税増税による一過性の物価上昇の影響でしょう。この増税の一時的な影響を除けば、「94年を境に下がり続けている」とみるべきでしょう。
ちなみに、94年は円が初めて1㌦=100円を割り込み、翌年4月には当時の最高値である同79円台まで円高が進んでいます。


また、名目GDPは97年を境に「下がり続けている」わけではありません。
世界的に「ITバブル」と言われた00年度や、03年度からリーマンショック前年の07年度までの5年間にわたって緩やかながら拡大を続けています。

こうして統計を仔細に点検すれば、「97年の消費税増税からデフレが始まった」という解釈は、こじつけもいいところだということが容易に理解できるはずです。

見過ごされがちな円高の影響

とはいえ、名目GDPが回復期もありながら15年前のピークをいまだに回復できていないのは事実です。そのことを理解するには、様々な要因を考慮する必要がありそうですが、見過ごされがちな視点の一つが、先程も少し触れた円高です。
1998年央の1㌦=146円をピークに2011年10月の同75円まで、13年間で円はほぼ2倍に増価しています。


円高の影響は、輸出が減少するだけでなく、輸入物価の値下がりでデフレ圧力を高めます。さらには、2000年代に入ってからの「中国ブーム」も相まって、製造業の空洞化が加速し、生産や設備投資、雇用の海外漏出も加速しました。中国からの安い製品輸入の増加や半導体製品の物価統計問題(同じ品質・性能の製品の価格変化を追うため、店頭の売れ筋相場よりも値下がりが強く反映されてしまう統計手法の問題)もあります。名目GDPが00年代央の緩やかな経済拡張期にも伸び悩んだ原因は、これらの要因が複合的に絡んでいるとみるべきでしょう。
ちなみに、名目GDPをドルベースでみると、95年のピークを2010年には超えています。
http://ecodb.net/country/JP/imf_gdp.html

10年ごとの金融危機の影響

アジア通貨危機を機に、97年秋に三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券が相次いで経営破綻し、1年後には日本長期信用銀行、日本債券信用銀行まで破綻に至った金融システム危機(言うまでもなく消費税増税とは全く関係がなく、バブル崩壊後の不良債権膨張が本質的原因)の影響による98~99年の落ち込みがいかに大きく、さらにはリーマンショック(サブプライム危機)による、主として円高と海外経済不振の影響が、当初の予想を超えて最近まで続いた影響がいかに大きかったかということでしょう。リーマンショックの原因となったサブプライム問題は、米国の金融機関やGMの国有化や超金融緩和(QE)で取り敢えず抑え込んでいますが、日本のバブル崩壊同様、不良債権処理には10年かかるとも言われ、今後FRBがQEの出口を探る中で、いつそれらが表面化して世界的な金融恐慌が再来してもおかしくありません。89年末のバブル経済崩壊と合わせ、日本はほぼ10年ごとに大きな金融危機を迎えているのです。
(その3に続く)
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