「97年消費税増税で税収は減った」は本当か?(その3)

Posted by fukutyonzoku on 07.2013 経済分析 0 comments 0 trackback
増税後、消費はいったん回復した

今一度、前記(その2)の直近の確報ベース(名目値→http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h23/tables/23qom1n_jp.xls、実質値→http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h23/tables/23qom1rn_jp.xls)で、97年消費税増税後のGDPと個人消費の推移を四半期データで確認しておこう。

直近の確報データでは、個人消費については増税直後の平成9(1997)年4~6月期でさえ名目、実質とも前年同期比プラスを維持している。7~9月期には名目で同2.0%増、実質でも同0.4%増と回復。北拓銀や山一証券が相次いで破綻し、金融恐慌の様相を呈した10~12月期には名目で0.5%増と伸び率が鈍化し、実質で同0.8%減とマイナスに転落。翌年1~3月期には名目で同マイナス2.6%、実質同マイナス3.6%と大きく減退した。GDPも以来1年以上にわたり、名目、実質ともにマイナス成長が続くことになる。
つまり、GDP全体も個人消費も、実質でも名目でも、増税直後でさえ前年比マイナスにさえなっておらず、3~5カ後の夏(7~9月期)には早くも巡航速度の成長を回復していたことがわかる。

ところが、秋以降になって突然伸び率が鈍化、さらに翌年1~3月期以降にガクンとマイナスに沈んだ--これが、統計から確認できる事実である。
このタイミングからみて、少なくとも97年から99年に至る経済の大きな落ち込みは、アジア通貨危機に端を発する金融恐慌の影響としか判断のしようがない、ということだ。
前記の昨年の私の記事でも引用しているが、家計調査を使った内閣府によるミクロ分析では、97年の消費税増税によるマイナスの所得効果は0.3兆円(GDP比0.06%)に過ぎないとの試算を明らかにした上で、「消費税増税が97~98年の景気後退の主因であったとは考えられない」と結論付けている。
http://www5.cao.go.jp/keizai2/keizai-syakai/k-s-kouzou/shiryou/wg1-1kai/pdf/5-1.pdf
→7ページ

■なぜ消費税だけ増えている?

税収について言えば、98年以降、法人税や所得税が、①不況による税収の自然減、②景気対策としての減税--のダブルパンチで落ち込んでいる中で、唯一、横ばい~微増傾向を続けているのが消費税だ。



仮に「97年の消費税増税が原因で総税収が減った」のであれば、主要なパスは以下のようになるはずだ。
①消費税増税→消費低迷→消費税収減
②消費税増税→消費低迷→企業売上減→業績悪化→法人税収減
③消費税増税→消費低迷→企業売上減→業績悪化→賃金等の所得減→所得税収減

細かく言えば、国税には揮発油税、相続税、酒税など他にも税目はたくさんあるが、「基幹税」と言われる所得税、法人税、消費税の三つで税収全体の9割近くを占めているため、この際他の税目は無視しても差し支えない。この三つのパスの全部、あるいはいずれかが起こり、トータルとして総税収が減少した、という論理になるはずだ。

しかし、まず①は、前述したように、消費税増税による消費減退の影響が最も顕著に顕在化するはずの増税直後でさえ、消費は減ってさえいない。つまり、明らかな間違い。②、③についても、いずれのパスもまず先に消費が減り始めないと、その後のパスにはつながらないため、これも誤り。
つまり、彼らの主張は「消費税増税後も消費は減っていない」という事実のみをもってしても説明がつかなくなる。
統計をきちんと確認しようとさえしない一部の(自称)経済評論家たちが主張するように、もし消費税増税の影響で税収が減ったというなら、なぜ肝心の個人消費や消費税が増税後も安定的に増えているのか、是非説明してほしいものだ。

総税収が伸びない最大の原因は所得税・法人税減税と地方への税源移譲

結論を繰り返せば、97年の消費税増税にもかかわらず、トータルで税収が減っているのは、全体としての経済の不調もあるが、端的に言えば、基幹税である所得税と法人税の減税の影響が大きい。

所得税については、過去にこれだけの税率引き下げや地方への財源移譲を行っている。


法人税については、このグラフを見てほしい。

法人税収は、企業が過去最高益を更新した06年でさえ、税引き前利益が半分程度だった96年頃とほぼ同水準しかない。つまり、法人税収が上がらないのは、経済(企業)の不振というより、減税の影響が大きいのだ。
また、特に地方の中小・零細企業で、法人税を払わない赤字企業が増えていることも影響している。

つまりは、一部の論者が主張しているように、景気が回復しても、税収の大宗を占めている法人税や所得税は税率を97年以前の水準に戻すか、マイナンバー(国民背番号)制度とセットとなるインボイス制度などの導入等によって補足率を抜本的に上げない限り、97年以前のようには増えない構造に変わってしまっているのだ。

消費は景気変動に左右されない

マクロでみた個人消費や消費税いうものは、一般に思われているほど景気変動に左右されるものではない。なぜなら、日本の個人消費の大宗は生活必需品だからだ。バブル的な経済環境の場合は贅沢品が売れるといったことはもちろんあるが、景気が悪い時でも、殆どの家計にとって支出を大きく抑えることには限界があるのだ。生活スタイルを大きく変えることは、評論家が言うほど簡単ではない。
大半の家計は結局、収入が減れば貯金が減る、あるいは借金が増えるという結果になる。日本ではそもそも普段から贅沢品をたくさんに買っている家庭はそんなに多くないということもある。経済学的に言えば、総所得が上がれば消費性向が下がり、総所得が下がれば消費性向が上がる。つまり、所得が増えても減っても、景気がよくても悪くても、今の日本のトータルでみた家計消費はさほどぶれないということだ。その原因を一言で言うなら「経済の成熟化」ということだろう。
消費税増税時の影響を考える際にも、同じことが言える。増税されるからといって、その分節約する(できる)家庭はあまり多くはないし、節約できても高はしれている。このことは、97年の増税後も消費税収が時々の景気変動に左右されず安定的に増えている事実からも裏付けられる。

税率が高い欧米の方が日本より景気がいいのはなぜ?

そもそも消費税増税が消費や景気を一時的ではなく長期的に冷やすのであれば、(付加価値税の)税率が(標準税率も実効税率も)日本より遥かに高い欧米の方が、97年以降最近まで消費も景気も全体として日本より好調に推移した事実をどう説明するのだろうか。消費税増税で本当に消費や景気が長期的な打撃を受け、その結果総税収も減ったというストーリーが本当なら、欧米諸国の消費や景気や税収はもっと酷いことになっていないと辻褄が合わないはずだ。しかし事実は、最も税率も税収(対GDP比)も低い日本が最も酷いことになっているのである。
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