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高橋洋一氏と国家戦略特区WGの呆れた規制緩和論

Posted by fukutyonzoku on 15.2017 政治・経済 2 comments 0 trackback
高橋洋一氏がダイヤモンドオンラインの記事で、マスコミはろくに関連資料も読まずに批判していると難癖をつけていたので、彼が紹介していた2年前(2015年6月8日)の「国家戦略特区ワーキンググループ(WG) ヒアリング」の議事要旨昨年(2016年9月16日)の同議事要旨を読んでみた。
読んで驚いた。八田達夫座長(アジア成長研究所長)、原英史(政策工房社長)、本間正義(東京大大学院農学生命科学研究科教授)、八代尚宏(国際基督教大客員教授)の委員たちの議論があまりに支離滅裂だからだ。こんな粗雑な議論で重要政策が決められていたなんて…と驚きを通り越し、背筋が凍る思いがした。

◾️農水省「新分野も含め獣医師は足りている」/文科省「新分野教育も既存大学で対応できている」

獣医師の需給見通しについては、私立獣医科大学協会が「我が国における獣医師の需給見通し等について」という意見書で、「供給過剰となる可能性がある」と分析し、詳しく論じている。獣医師を所管する農水省も獣医師は十分足りているとしている。


実は、日本の犬、猫等のペット需要は、人口減の影響もあり、2008年をピークに既に減少に転じているのだ。


獣医大学・学部を卒業し、獣医師国家試験に合格して新たに獣医になるのは毎年約1000人。獣医師免許を持つ人は2014年末時点で約3万9千人。高齢でも働く獣医師が多いため、10年前から約8千人増えている。逆にペットや家畜は減っているだから、獣医師はむしろ余る方向にあるのだ。

そもそも日本のような安易な生産や店頭展示販売、通信販売は英国等のペット先進国では禁止されているのだが、日本では一般消費財と同じように大量生産・大量廃棄(殺処分)しており、国際的な動物愛護団体から批判されている。今後、このブリーダー産業のビジネスを優先した大量生産・大量廃棄のサイクルが今後さらに拡大するとは思えないし、政策的にそうすべきでもないことは明らかだろう。
農水省は、国際越境感染症や海外の高リスク家畜伝染病等の対応も、既存の組織で対応できていると説明。文科省は、加計学園が提案しているライフサイエンス(生命科学)等の新分野についても、分野ごとに既存大学の研究の現状を説明し、全ての分野で対応できている、と説明している。
足りないのは獣医や獣医学生ではなく、教員の方なのだ。既存の獣医学系16大学でも、文科省の教員数基準を満たしている大学は一つもないほどだ。

それに対し、本間委員や八代委員は「獣医師の狭い世界でギルドを作り、定員管理して競争者を増やさないようにしている」と何の根拠もデータも示さずに決めつけ、農水省や文科省を既得権益を守りたいだけの「抵抗勢力」であるかの如く罵っている。

◾️挙証責任を文科省に転嫁

そもそも日本の酪農・畜産農家は廃業が相次いでおり、特にチーズやバター等の乳製品は品薄と価格高騰が社会問題となっている。最近では学校給食から牛乳も消えつつある。米国や豪州、フランス等の酪農畜産大国でさえ、補助金に頼って辛うじて経営が成り立っているような状態だ。それでは、安倍政権は補助金を大きく増やして酪農・畜産産業を支援しようとしているのかといえば、そんな意欲は全く見えない。
そのことの是非はともかく、農水省は今後も酪農畜産農家の減少を見込んでおり、それらをケアする産業獣医や公務員獣医の需要が普通に考えれば増えるはずがない。鳥インフルエンザなどの越境感染症研究など新分野への対応は必要かもしれないが、そもそも日本は酪農畜産大国でもなく、むしろ壊滅状態なのに、それについては何の議論もせず、地域的な獣医不足や新分野への対応だけを議論しているのだ。何の根拠も示さずに新分野については日本の医療技術を応用すれば国際的に日本がリードできるとか、金儲けの匂いがする?とでも決めつけているようなのだ。本末転倒ではないか。
もし、そうではなく、産業獣医のライフサイエンス分野には可能性がある、だから日本は戦略的に最先端分野の獣医を育てるべきなのだ、だから新学部を作るべきだ、というのなら、そのことの根拠を示す虚証責任は、一義的には加計学園ら申請者側にある。政府内で言えば、それを押している国家戦略特区の民間議員や事務局の内閣府であろう。「岩盤規制」を打破し、特区で具体的な成果を示したい、加計を特区に指定したいと考えているのは彼らの方だからだ。にもかかわらず、高橋氏と同様、挙証責任を文科省に転嫁している。文科相は諮問会議メンバーでもなけれな特区指定の決定権もない(決定権者は文科相も入っている閣議でも、諮問会議でもなく、安倍首相一人)のに、加計認可の責任だけを負わすという無茶苦茶なことをやっているのだ。まさに、最初から加計の開学ありきとしか思えない議論なのだ。

◾️内閣法違反の疑いが濃厚な加計学園の特区指定

そして、2年前のWG直後の2015年6月30日には、獣医学系養成学部新設を国家戦略特区で認める際クリアすべき条件である「石破4条件」(通称、当時の国家戦略特区担当相は石破茂氏)を含む「日本再興戦略改訂2015」が閣議決定された。
言うまでもなく閣議は政府の最高意思決定機関であり、特区を審議する国家戦略特区諮問会議(議長・安倍首相)は閣議の下位機関。特区法で特区指定の最終決定権を持つと定められた安倍首相も、閣議決定には従わざるを得ない。

前掲の「日本再興戦略改訂2015」の本文(第二部及び第三部)の121㌻に「石破4条件」が記載されているので、引用する。

(1)現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し、
(2)ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり、
(3)かつ、既存の大学・学部では対応が困難な場合には、
(4)近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う。

((1)~(4)の番号は筆者挿入)

つまり、獣医師養成学部新設を特区で指定するなら、既存の大学・学部では対応が困難な新しい分野であり、その新分野の需要が将来伸びる見通しがあることを明らかにする必要がある。かつ、(4)は「全国的見地」から獣医師需要を勘案せよ、と言っている。⑷について石破氏は「一部の地域のみの利益に資するのではなく、全国的にその利益が及ばなくてはならない」と言っているが、一部地域の需要不足を理由に設置してはいけない、ライフサイエンスなど新分野や不足している職域の全国的需要にかなう計画でないといけない、と言っているのだ。
⑴については、加計学園が一応構想を具体化させているとしても、
⑵の「新たに対応すべき分野における具体的な需要は明らかに」なっていない。⑶の「既存の大学・学部では対応が困難な場合」についても、文科省も農水省も現に対応できているし今後もできる、とWGで説明したが、その説明を覆す根拠を誰も示していない。⑷「近年の獣医師の需要の動向も考慮」すれば、ペット獣医を中心に需要は減っており、今後も減る見通しなので、新設は不要との結論にならなければおかしい。「全国的見地」から検討すれば産業獣医の地域偏在も待遇改善でカバーできるし、農水省もWGでそう説明している。

加計を特区指定したいなら、クリアできていることを安倍首相と諮問会議が示す必要があるが、それが全くできていないのに、安倍首相は指定してしまったのだ。つまり、加計学園の特区指定は閣議で決定されたルールを逸脱しており、内閣の閣議遵守義務を定めた内閣法違反の疑いが濃厚なのだ。
前川喜平・文科省前事務次官は「行政が歪められた」と語ったが、これは何も文科省の言い分が通らなかったことだけを指しているのではない。本来は大学設置の可否を最終決定する大学設置・大学法人審議会(文科相の諮問機関)での審査という手続きを踏まず、さらには政府の最高意思決定機関である閣議で正式決定されたルールまで逸脱して加計学園が特区指定されたことを指しているのだとみられる。つまり、特区指定についても大学設置についても規定のデュープロセスが無視されているのだ。なぜそんな暴挙がまかり通ったかといえば、そこには「総理のご意向」(または周囲の過剰な「忖度」)だろう、と。

◾️獣医師が無制限に増えても国民に害はない?

また、委員たちは「獣医師需給の調整は農水省が担当する国家試験でやればよい。大学の段階で定員調整をするのはおかしい」とまで言っている。法学部がそうだと。正気か?
獣医師養成系は獣医師になるための6年間の専門教育なのだ。教員の人件費程度しかお金がかからない法学・政治学、経済・経営、文学・歴史・哲学等の社会科学系、自然科学でも数学、理論物理等とは違い、獣医師養成は動物を飼育したり医療機器等の設備も必要なため、お金がかかるのだ。私立大の学費をみても、医学部ほどではないが、それでも年間200万円以上、6年間で1200万~1400万円程度となっている。国立大はもちろん私立大にも国からは助成金が交付されており、地元自治体からも出資や補助、中には土地の無償譲渡まで受けているケースもある(今回の加計も)。
「無制限に獣医師が増えたとしても、何ら国民にとって害はない」(本間委員)とも言っているが、国や地方自治体が税金を入れて教育しているのに、獣医師になれず専門性を生かせる就職もできない学生を大量に生み出すことは、税金とマンパワーの浪費にほかならず、国民・納税者にとっては損失である。だからこそ医学部や教育学部等の専門性が高く、殆どの修了生が国家試験を受ける分野は入学段階で需給調整しているのである。むしろ法学部が例外なのだ。
前述の通り法学部はさほどお金がかからない上に、司法試験を受けなくても公務員など法律知識が必要な就職先は少なくないし、仮に就職に直接結びつかなくても社会人として基礎的な法律・政治知識はあるに越したことはない。しかし、獣医学の知識はどうか。WG委員が言うほど社会人一般に広く必要な汎用性のある知識とは到底考えられない。
さらには、法科大学院(ロースクール)を廃止する私立大が相次いでいるように、出口がハッキリ見通せない教育機関には結局、学生が集まらなくなり、運営が危うくなる。倒産すれば、学生にも自治体にも被害が及ぶ。事実、加計学園の大学を巨額の補助金を出して誘致した今回の愛媛県今治市や、2004年に同学園千葉科学大を誘致した千葉県銚子市は、財政破綻寸前とも言われ、地元では大きな問題となっている。
また、仮に大学が破綻した場合、在学生に「そんな大学を選んだ君たちの自己責任だ」と放り出せるのか。教育に企業と同じ自由競争原理を持ち込むことが、そもそも間違っていないか。

◾️教育は規制緩和に馴染むのか

文科省による大学設置の許認可制は「役人が既得権を守ったり天下り先を確保するための岩盤規制なのだから、そんなものはやめて届出制にして原則自由化した方がいい」というのなら、国公立大は民営化し、私学助成金も全廃しないと理屈が通らない。なぜなら、かつての郵政3事業のように中途半端に公共事業体や公的補助を残せば、「民営圧迫」との批判が必ず起こるからだ。つまりは大学のビジネス化だ。特区諮問会議の民間議員らはそうしろと言っているのに等しい。
日本のGDP比の教育予算はただでさえOECD最低の水準で、特に高等教育への配分が少ない。完全にビジネス化されている塾や予備校、習い事などを含めて、家計の過重な教育費負担が少子化の大きな要因ともなっている。厳しい財政事情の中で、政府はなるべく金を使わず、民間資金を上手に取り入れて高等教育や研究開発を活性化させようとの狙いはわからないでもない。しかし、効果的にそれをやるには「選択と集中」が必要だ。最もポテンシャルのある研究機関に研究資金を重点配分することだ。その意味では、京都産業大が今回提案していた京都大や大阪府立大との連携によるiPS細胞の獣医学部分野への応用研究の方がライフサイエンスで世界をリードできる可能性が高いのではないか。国家戦略特区制度は、そもそも地方再生事業でも過疎対策事業でもなく、あくまで国際競争力の強化やそれに資する国際的なビジネス拠点形成が目的なのだ。
また、教育のビジネス化をこれ以上進めれば、教育は益々「金で買うもの」になる。今でさえ日本の大学偏差値と学生の親の所得水準は見事にパラレルだ。大学間の競争が激化すれば、特区民間議員らが言うように、本当に「安くて質の高い教育」が生まれるだろうか。「良いものは高い値段がつく」。それが市場原理だ。市場原理の強い米国の私大を見れば一目瞭然だ。名門で偏差値が高いほど学費も高い。日本の塾や予備校も同じだ。教育への公費負担削減と市場原理導入は、むしろ米国のように普通の家庭では払えないほど大学の学費が高騰する結果となる可能性が高い。
そうなれば、教育機会格差の拡大と所得格差の固定化が益々進むことになるし、学生が卒業後も返済に苦しんでいる貸与奨学金返済負担の問題もさらに深刻化することになる。高等教育への国民のアクセスが悪化し、特区制度の狙いとは逆に日本の国際競争力が劣化していくのではないか。
WG委員や高橋洋一氏は、それでもいいというのだろうか。教育を政治利権や目先の経済活性化の道具にしてはならない。

鳥越「淫行疑惑」報道のレベルの低さ

Posted by fukutyonzoku on 31.2016 政治・経済 0 comments 0 trackback


都知事選の告示後に週刊誌が鳥越俊太郎候補の「女子大生淫行」疑惑を競って書きたてた。便乗して騒いでいる人たちが少なからずいるが、論理を超えた感情的な左派嫌いか、もてない男の「妬み」にしか見えず、はっきり言ってみっともない。

最初に断っておくが、私は都知事選で鳥越氏を支持しているわけではないので、ことさら彼を擁護するつもりはない。日本の現職総理大臣の女性スキャンダルを日本の主要メディアで初めて書き、宇野宗佑首相を辞任に追い込んだのは、当時鳥越氏が編集長を務めていた「サンデー毎日」だ。彼はこの記事によって名を上げ、TVキャスターに転身した。その意味では、まさに「因果応報」だとさえ思っている。
今回の選挙に関しても、はっきり言って野党連合という枠組み自体を支持していないし、政策も明確でない。発言は左に寄り過ぎているし、そもそも支離滅裂だ。年齢や健康面の不安も大きい。

それでもこの週刊誌の「淫行」疑惑は選挙期間中に出すべき報道ではないし、こんな卑劣な選挙妨害によって有権者の投票行動が左右されるべきでもないと思っている。

『週刊文春』と『週刊新潮』の報道内容を総合すれば、相手の女子大生は、鳥越氏からメール等で「好きだ」としつこく言い寄られ、2人で食事をし、鳥越のマンションにまでついて行っている。マンションの部屋ではキスを許している。
彼女には当時、今は夫になっている若い彼氏もいたという。「信じていたのに、裏切られた」「軽率だった」というなら、その時点で連絡を断てたはずだ。
ところが、そういうことがあった後に、彼女は河口湖の鳥越の別荘に1人でついて行ったという。彼女は「寝室は別々のつもりだった」と釈明しているので、当然「お泊り」前提で出掛けているわけだ。仕事で男性上司とたまたま2人で出張させられ、同じホテルに宿泊する羽目になったのとは訳が違う。結局、「一緒に寝よう」という鳥越の誘いにも同意し、寝室を供にしている。そこまで自分の意思で行動を共にしながら、「淫らな行為を強要された」「強引に裸にされた」と事後に騒ぎ立てるのは、社会通念上、通用する言い分ではない。男女のことを何も知らない小学生でもあるまいし。

もし、鳥越の「不倫」(性交にまで至らなかったのなら「不倫」というのも微妙だが)が道徳的に問題だというなら、その女子大生も鳥越に妻子があることを知りながらデートを重ね、別荘にまでついていっているのだから、完全に同罪だ。告発する資格はない。また、彼女は大学で鳥越の教え子というわけでもなかったようだから、優位な立場を利用したセクハラでもない。18歳未満でもなく、さらには性交もしていないというのだから、二重の意味で(「淫行条例」でいうところの法律的な意味での)「淫行」ではない。

「妻子がありながら40歳も年下の若い女に手を出そうとしたのが倫理的に問題だ」というなら、それは個々人の倫理観の問題に過ぎず、そういう「お盛んな」老人が好きか嫌いか、知事として相応しいかどうか、という主観的な問題でしかない。個人的には「モテ男」に対するつまらない嫉妬でしかないと思う。古今東西、年の差婚や老いらくの恋なんて珍しくもなんともない。唯一の被害者は、こんな形で選挙を妨害された鳥越本人と、それ以上に夫や父親の女性問題を世間に晒された彼の妻子だろう。
そう考えたら、この「女子大生淫行」疑惑は、メディアが公益上報道すべき社会的な「問題」なのかどうか、さっぱり訳がわからなくなる。

◾️政治家の評価と私生活の問題を切り離す欧米の政治文化

欧米では、政治家の不倫問題は「私生活上の問題」として政治家の資質や評価とは切り離して考えるのが常識だ。特にフランスなどは、良し悪しはともかく、ジスカール=デスタン、ミッテラン、シラク、サルコジ、オランドの歴代大統領にはみな愛人がいた。最近のサルコジやオランドのケースはかつてよりメディアも報道するようになったが、それは主に公金支出や安全保障上の問題に発展した場合であり、単に倫理観や道徳の問題として国民的バッシングが起こったり、辞任した大統領は一人もいない。
それは、ナポレオンの時代から「英雄色を好む」ことが、文化的に許容されているからではないか。実際の社会は乱れ切っているのに、なぜか「公人」にだけは厳格で偏狭な倫理観を(週刊誌メディアが)振りかざす日本と違って、男女関係に積極的なことや人生を楽しむ姿勢は基本的に大切なことだというコモンセンスが共有されているからだろう。公職にある物にもプライベートはあり、仕事に支障がない限り詮索すべきではないという「大人」の分別だ。

ただし、イタリアのベルルスコーニ元首相の場合は、乱行パーティー疑惑などの性的スキャンダルのみならず、数々の差別的失言や汚職疑惑まで露見し、未成年の少女買春で起訴までされた。そのため支持率は急落し、経済不振への責任問題とも相まって辞任に追い込まれた。これはあまりに品行がグロテスクだったという例外的ケースだ。

米国でもクリントン大統領のホワイトハウス研修生との「不適切な関係」が問題になったが、辞任まではしていない。マリリン・モンローとの不倫関係が現在では明らかになっているJ.F.ケネディーもクリントンと同様、歴代大統領の中で高い評価を受けている。このことは、米国でも政治リーダーの評価と女性問題は基本的に切り離されて考えられているということだろう。

参院選で野党はなぜ敗れたか

Posted by fukutyonzoku on 10.2016 政治・経済 0 comments 0 trackback


参院選は、ほぼメディアの事前予想通り、与党が改選過半数を制し、改憲4党が非改選を含め3分の2を超えた。

今回は安倍批判票の受け皿がなかったというのが率直な印象だ。「野党共闘」は両刃の剣だった。宮城、新潟など奏功した選挙区もあったが、地元議員ら実動部隊が互いに不信感を持ったままま最後まで一体化できなかった選挙区が多かったのではないか。比例区では野党は全般に票を落としたようだ。特に民主党は左傾化により中道保守層の票を大幅に減らした。
改憲については、そもそも公明、維新は9条改正には否定的だから、リベラル陣営が危機感を煽ったような即9条改正とはならないだろう。このことは選挙前からわかっていたことだ。リベラル勢力の扇動は空回りしたのではないか。
むしろ、内向きになる米国、膨張主義を強める中国、核とミサイル開発で瀬戸際外交を強める北朝鮮、日本人を例外扱いしないテロの頻発…日本を取り巻く安保環境は間違いなく厳しくなっているのに、護憲派が訴えたのは「憲法を守れ」という相も変わらぬお題目だけで、安保環境の変化に対する現実的な政策対応はほとんど何も示していない。その代表格である社共に民主党が共闘したとあっては、ますます政権を任せられないと思った人が多かったのではないか。

アベノミクスについても、必ずしも多くの支持を集めているわけではないが、それでは野党に現実的な対案があるかと言えば、そうは見えなかった。若者支援とか子育て支援の充実など耳障りのいい個別政策は並んでいるが、肝心の財源論が抜け落ちている。全政党が消費税増税は延期だし、歳出削減にはどこも触れていない。つまり財源は国債増発しかない。説得力ある成長戦略が示せていたとも思えない。これでは政策とは言えない。相変わらずポピュリズム政党しかないということだ。

G7は本当に「世界経済の新たな危機」で一致したのか?

Posted by fukutyonzoku on 23.2016 政治・経済 0 comments 0 trackback
先日の参院選を前にした党首討論会で、安倍首相は消費税増税再延期の根拠として伊勢志摩首脳宣言を引き、「(新たな危機に協調して対処することで)一致したんですから」と相変わらず詭弁を弄し続けている。

しかし、同首脳宣言では「前回の会合以降、世界経済の見通しに対する下方リスクが高まってきている」と言っているに過ぎない。

「新たに生じつつあるリスク」とも言っているが、それを指しているとおぼしき具体的な記述は以下の通り。

「近年、世界的な貿易のパフォーマ ンスは期待外れの状況にある。弱い需要及び未対応の構造的な問題が、実際の及び潜在的な成長に負荷を与えている主な要因である。非経済的な由来による潜在的なショックが存在する。英国の EU からの離脱は、より大きな国際貿易及び投資に向けた傾向並びにこれらが生み出す雇用を反転することになり、成長に向けた更なる深刻なリスクである。悪化した地政学的な紛争、テ ロ及び難民の動きは、世界の経済環境を複雑にする要因である」

これだけである。リーマン・ショックの「リ」の字もサブプライム危機の「サ」の字も出てこない。これのどこが「危機前夜との認識で一致した」というのか。経済の先行きといものは、常に何がしかのリスクがある。現在の考えうるリスクを羅列しているだけである。もし危機が起こったらG7が政策をフル動員し協調して対処しましょう、というのは一般論に過ぎない建て前を再確認しているだけのことである。

さらにこの宣言では、「債務を持続可能な道筋に乗せていくための取組を継続」することの重要性や、労働市場改革等の「構造政策」の重要性を繰り返し強調している。金融政策や財政政策だけに頼ることを戒めているのだ。
「債務を持続可能な道筋に乗せていくための取組」がG7でも世界でも最も遅れている日本が、消費税増税を再延期して財政出動を呼びかけている場合ではないのだ。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000160267.pdf

消費税軽減税率と法人税率引き下げの本当の意味

Posted by fukutyonzoku on 27.2015 政治・経済 0 comments 0 trackback
消費税率の10%への引き上げ時に、外食を除く食料品を8%に据え置く軽減税率の導入が自・公協議で決着した。

日本の消費税率は20%を超える欧米の付加価値税率より低いことは周知の事実だが、実は税率が低い割には税収ウエイトは比較的高い。
以下は、主要国の税収全体に占める消費税(付加価値税)の税収ウエイト(カッコ内は基準税率)。

フランス:39.5% (20%)
ドイツ :46.7% (19%)
イタリア:37.1% (22%)
イギリス:41.3% (20%)
スウェーデン:38.4%(25%)
日本  :30.7% (8%)

この原因は、日本は他の基幹税収(所得税、法人税)が過去の減税や景気悪化の影響で税収が落ちていること、加えて日本は食料品等の軽減税率が未導入であることもある。日本は食料品の消費税率が8%のままなら、主要国の中では低いとも言えない。



例えば、各国の食料品税率は英国、カナダ、オーストラリア、メキシコはゼロ、スイス2.5%、台湾、ポルトガル、チェコは5%、フランス5.5%、オランダ、ベルギーが6%、ドイツ、スペイン、ポーランド、シンガポール、タイが7%ーーとなっている。

軽減税率を導入するなら、8%への据え置きでいいのか、という議論が殆ど聞かれなかったことが不思議だ。

◾️法人税率引き下げの狙いは外形標準課税導入の隠れ蓑

法人税率の引き下げと同時に赤字企業にも課税される外形標準課税が導入される。実は、大企業の殆どは複雑怪奇な租税特別措置(租特)を駆使して節税して、法人税を殆ど支払っていない。例えば日本最大の企業であるトヨタ自動車は法人税を過去5年間、1円も払っていない。
つまり、大企業にとっては法人税率が上がっても下がってもほとんど影響はない。財政当局にとっては、法人税率を下げても税収はそれほど減らない(逆に言えば、仮に法人税率を上げても税収はそれほど増えない)ことを財務省はわかっている。だから、法人税率引き下げについてはさほど抵抗はないし、むしろ税率を下げることで、国内外の経済界に安上がりのアピールができるメリットがある。
財務省にとって法人税率引き下げの本当の狙いは、それとのバーターである外形標準課税の導入だろう。つまり、中小零細企業をターゲットにした課税ベースの拡大である。今回の法人税率引き下げは外形標準課税導入との差し引きで「税収中立」とされているが、恐らく差し引きで増税となる可能性が高いと私はみている。

◾️自営業者のどんぶり勘定にメス

とはいえ、日本の自営業者はこれまで「クロヨン」「トーゴーサン」と言われるように税務署の捕捉がユルユルで、過保護にされてきた。中小零細企業は法人税から逃れるための見せかけの赤字企業が殆どだ。経営者の家計とどんぶり勘定で、新車購入とかガソリン代、備品購入などの本来は家計支出であるものを会社の経費として落とし、経費を膨らませることで企業収支を赤字にするのだ。
それは過去の自民党の田中派的選挙対策でもあった。そこにようやくメスを入れるという意味では、景気にはマイナスかもしれないが、公平・中立という税制の原則に鑑みれば、本来はもっと早く正すべきだった歪みと言えよう。
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